チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年1月7日
新たな焼身抗議ンガバで2人、今年初めて
昨日6日、午後2時40分頃、ンガバの中央市場付近で2人のチベット人が焼身抗議を行った。今年に入って初めての焼身抗議、2009年以降14人目と15人目である。
1人は僧侶、もう1人は俗人と言われ、歳は20代、氏名は未だ不明。焼身抗議の場所もある情報によれば同じ場所で同時に行われたと伝え、他(RFA等)の情報によれば1人は上ンガバで、もう1人は中央市場で行ったという。どちらにせよ、2人は示し合わせてほぼ同時に焼身を実行したと思われる。
2人とも様々なスローガンを叫んだ後、身体に灯油を浴びて火を付けた。
目撃者の話によれば、大きな炎に包まれながら2人ともキルティ僧院の方向を向いて合掌した姿勢を保っていたという。ある目撃者は「ダライ・ラマ法王に長寿を!ダライ・ラマ法王の帰還を!」と叫んだのを聞いたという。
2人とも駆けつけた警官隊が倒し、火を消した後連れ去った。
2人の内、僧侶はすでに死亡したと伝えられる。もう1人の俗人の生存も危ぶまれている。
この情報を最初に伝えたのはブッダガヤのカーラチャクラに参加中のンガバから来たチベット人であった。その人は昨日午後2時頃ブッダガヤのカーラチャクラ会場でダライ・ラマ法王が法話を始められた時、その声をンガバに残る親戚に聞かせて上げようと電話したところ、その親戚から焼身抗議があったことを伝えられたという。また、「彼らの安寧を祈るために法王に供養物を捧げてほしい」とも懇願されたという。
ほぼ1ヶ月ぶりの焼身抗議の知らせである。ンガバでは中国当局の弾圧が続く限り焼身抗議は続くという宣言が行われている。今回の焼身抗議はンガバを初めとするチベット内地の状況が少しも改善されていないことの証である。
亡命政府が(今から)発表する声明の中で「我々は決して焼身抗議を奨励するものではない。原因は中国政府のチベット人弾圧である」と中国政府を批難している。
参照:6日付けRFA英語版http://p.tl/4ATg
7日付けTibet Times チベット語版http://p.tl/ipyM
6日付けphayul http://p.tl/Kc7e
日本語でも時事通信がBBC等の引用としてこの焼身抗議の件をアップしているhttp://p.tl/Kc7eがその記事では焼身抗議は2人ではなく1人となっている。
追記1:TSG-Lによれば、俗人の名前は元僧侶ツルティムであるという。
追記2:RFAhttp://p.tl/qQzOによれば、俗人であるツルティムが死亡したという。
追記3:僧侶の名前はテンニ(テンジン・ニマ)
参考:9日付けAFP日本語版http://p.tl/EkrJ
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)