チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年12月7日

ウーセルさんのウォールストリートジャーナル掲載記事「チベット人は信仰と自由のために焼身する」

Pocket

111207120043SQ6日付けThe Wall Street Journal に焼身抗議に関するウーセルさんの記事が掲載された。http://p.tl/vA_N

中国語原文が7日付けのブログに掲載されている。http://p.tl/vSA3
WSJに掲載されたものは原文の要約であることが分る。

以下、WSJ掲載分の英語からの訳を参考までに紹介する。

—————————————

Tibetans Burn for Their Faith and Freedom
チベット人は信仰と自由のために焼身する

The Communist Party cannot understand the meaning, or the power, of a believer’s sacrifice.

ツェリン・ウーセル

1ヶ月前にラサを離れ、私は戒厳令下に住むことから解放された。至る所に兵士と警察がいた。しかし、チベット人にはどこに行こうと苦しみが付きまとう。また一人のチベット人が焼身したというニュースが入る。

2009年以降13人の僧侶、尼僧が抗議の焼身を行った。もっとも悲惨だったのは先月35歳の尼僧パルデン・チュツォの焼身シーンだった。ビデオは3分もない。始まるや、人は驚愕する。若い女性の身体全体が炎に包まれている。しかし、彼女は、燃え上がる松明のようにまっすぐ立ったままだ。涙が雨のように溢れ出、顔を両手で覆うしかなかった。

最初、私は彼女が炎から抜け、前に進み出て、法王の名を叫んでいるように感じた。しかし、もっとよく見ると彼女は一歩も前に踏み出すこともなく、少し前屈みになっただけで、立ちすくんでいた。周りの人々は、激しい炎が彼女の生気を奪う間、なす術もなく叫びを上げるばかりであった。若き尼僧が崩れ落ちた時、彼女は敬虔に両手を合わせたままであった。

私はビデオに写っていたチベット服を着て一言も叫ばなかったチベット人女性でありたいと思う。彼女は炎に包まれるパルデン・チュツォに近づき、敬意の印に白いカタを投げかけた。

共産党はなぜこのようなことが起こるのかを理解しない。独裁者が信じるものは銃と金のみ。彼らは自分自身へも信を置かないし、偉大な利他的行為に人を導く信仰の力も理解できない。

チベット人は命を粗末にするほど馬鹿ではない。そうではなく、彼ら僧侶や尼僧を絶望の底に追いやり、焼身の炎を点火させたのは彼ら独裁者である。

如何なる宗教であろうと、それを真に脅かす大きな災難が降り掛かった時には、これを護るために殉教しようとする信者が必ず現れるものだ。文化大革命の時西安の法門寺の僧侶たちは、紅衛兵が仏塔を破壊するのを止めるために焼身抗議を行った。

チベットの全ての僧院には中国の役人と警官がいる。彼らは全ての僧侶と尼僧を洗脳するために党により送り込まれたのだ。ダライ・ラマを悪魔だと批難し、共産党が彼らの救世主だと認めるために手を上げさせるためにだ。

中国政府は焼身抗議するチベット人たちが抵抗運動を鼓舞するのではないかと危惧している。焼身抗議の事実を隠し、その意味を曲解させようと如何に努力しようとも、真実は広まり続ける。高天原で、チベット人は銃口の前に立つ。「燃え上がる殉教者」になろうとするチベット人は常にいる。

彼らの犠牲には2つの意味がある。一つには信仰を守るため、もう一つは自由のために戦うため。死ぬ時に燃え盛るチベット人たちは叫んだ。「チベットは解放されるべきだ!」「ダライ・ラマ法王の帰還を!」

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

ちべろぐ

Archives

  • 2018年3月 (3)
  • 2017年12月 (2)
  • 2017年11月 (1)
  • 2017年7月 (2)
  • 2017年5月 (4)
  • 2017年4月 (1)
  • 2017年3月 (1)
  • 2016年12月 (2)
  • 2016年7月 (1)
  • 2016年6月 (1)
  • 2016年5月 (9)
  • 2016年3月 (1)
  • 2015年11月 (1)
  • 2015年10月 (2)
  • 2015年9月 (4)
  • 2015年8月 (2)
  • 2015年7月 (14)
  • 2015年6月 (2)
  • 2015年5月 (4)
  • 2015年4月 (5)
  • 2015年3月 (5)
  • 2015年2月 (2)
  • 2015年1月 (2)
  • 2014年12月 (12)
  • 2014年11月 (5)
  • 2014年10月 (10)
  • 2014年9月 (10)
  • 2014年8月 (3)
  • 2014年7月 (9)
  • 2014年6月 (11)
  • 2014年5月 (7)
  • 2014年4月 (21)
  • 2014年3月 (21)
  • 2014年2月 (18)
  • 2014年1月 (18)
  • 2013年12月 (20)
  • 2013年11月 (18)
  • 2013年10月 (26)
  • 2013年9月 (20)
  • 2013年8月 (17)
  • 2013年7月 (29)
  • 2013年6月 (29)
  • 2013年5月 (29)
  • 2013年4月 (29)
  • 2013年3月 (33)
  • 2013年2月 (30)
  • 2013年1月 (28)
  • 2012年12月 (37)
  • 2012年11月 (48)
  • 2012年10月 (32)
  • 2012年9月 (30)
  • 2012年8月 (38)
  • 2012年7月 (26)
  • 2012年6月 (27)
  • 2012年5月 (18)
  • 2012年4月 (28)
  • 2012年3月 (40)
  • 2012年2月 (35)
  • 2012年1月 (34)
  • 2011年12月 (24)
  • 2011年11月 (34)
  • 2011年10月 (32)
  • 2011年9月 (30)
  • 2011年8月 (31)
  • 2011年7月 (22)
  • 2011年6月 (28)
  • 2011年5月 (30)
  • 2011年4月 (27)
  • 2011年3月 (31)
  • 2011年2月 (29)
  • 2011年1月 (27)
  • 2010年12月 (26)
  • 2010年11月 (22)
  • 2010年10月 (37)
  • 2010年9月 (21)
  • 2010年8月 (23)
  • 2010年7月 (27)
  • 2010年6月 (24)
  • 2010年5月 (44)
  • 2010年4月 (34)
  • 2010年3月 (25)
  • 2010年2月 (5)
  • 2010年1月 (20)
  • 2009年12月 (25)
  • 2009年11月 (23)
  • 2009年10月 (35)
  • 2009年9月 (32)
  • 2009年8月 (26)
  • 2009年7月 (26)
  • 2009年6月 (19)
  • 2009年5月 (54)
  • 2009年4月 (52)
  • 2009年3月 (42)
  • 2009年2月 (14)
  • 2009年1月 (26)
  • 2008年12月 (33)
  • 2008年11月 (31)
  • 2008年10月 (25)
  • 2008年9月 (24)
  • 2008年8月 (24)
  • 2008年7月 (36)
  • 2008年6月 (59)
  • 2008年5月 (77)
  • 2008年4月 (59)
  • 2008年3月 (12)