チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年12月5日
鉱山開発を批判する歌詞を書き僧侶2人拘束
最近、アムド、ツォヌップ(མཚོ་སྔོན་ཞིང་ཆེན་མཚོ་ནུབ་ཁུལ་青海省海西モンゴル族チベット族自治州)、テムチェン・ゾン(ཐེམ་ཆེན་རྫོང་天峻県)で僧侶2人と歌手数人が集まり༼རྡུལ་ནག་ཁྲོད་ཀྱི་ཕ་ཡུལ།༽「黒い塵にまみれた故郷」という詩歌を発表した。この詩歌の中には鉱山開発により環境が破壊されていること、地域の人々が圧政の下、恐怖の日々を送っているということが歌われていた。
先月6日、この詩歌を書いた僧ニャナック・プンツォགཉའ་ནག་ཕུན་ཚོགས་と僧ケルサン・ジャミヤンསྐལ་བཟང་འཇམ་དབྱངས་が当局により拘束された。歌の歌詞を書いただけで拘束されるのが中国だ。
詩歌の一部がポスターに載っている。これを意訳する:
「(チベットのカム・アムド・ウツァン)3つの地域は常に赤い(共産党)政府に支配されている。
知識ある者たちは彼らの下で働くしかない。
自由も幸せも暗闇に包まれた。
金の如き(チベットの)素晴らしさも地下に埋められたままだ。」
ところで、この地域で最近掘り出されている物の中にはメタンハイドレート(チベット語では༼རང་འབར་འཁྱགས་རོམ་༽「自然に燃える氷の塊」)がある。テムチェン県のポンタクབོང་སྟག་にある聖山近くで最近発見されたらしい。
メタンハイドレートというと、一般には日本近辺のように海底深くに存在し、膨大な存在は確認できても採掘費用が膨大で採算に合わないという代物だが、チベットでは地表近くに存在するらしい。中国側の発表によれば、この地区のメタンハイドレートの埋蔵量は何と340億トンであるという。これは中国の全化石燃料消費量の100年分に相当するそうだ。
メタンハイドレート
開発に伴い、付近の遊牧民は強制移住させられているという。
参照:4日付けRFAチベット語版http://p.tl/bhRz
2日付けTibet Times チベット語http://p.tl/OjOg
ユシュンགཡུ་ཞུན། http://p.tl/_xjp
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)