チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年12月3日
ウーセル・ブログ 写真記録:「安定維持」されるチベット人
文革時代かと見紛うチベット人弾圧写真。
以下の写真に2日付けブログでウーセルさんが短い解説を書かれている。
原文:http://p.tl/tKHQ
翻訳:雲南太郎(@yuntaitai)さん
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中国のウェブサイト「超級大本営軍事論壇」(http://lt.cjdby.net/)「四月青年社区」(http://bbs.m4.cn/portal.php)などから6枚の写真をグーグル+に転載している人がいた。「四川省成都、徳陽の特殊警察が省内チベット地域の安定を維持している写真」というが、撮影場所と日時については書かれていない。
これらの写真はチベット人が弾圧されている事実をはっきりと示している。
私はとても驚き、繰り返し写真を眺めた。撮影時期は2008年3月以降だろう(「国家分裂」「国家機関襲撃」などの言葉は今年捕まったチベット人の「罪名」でもある)。僧院の建物や通りの商店名から見て、場所はアムドのンガバ(現在の四川省アバ州アバ県)、既に9人のチベット人僧尼が焼身抗議したンガバだ……。
写真には、きつく縛られてプレートを首に掛けたり、護送されたり、座らされたりしたチベット人の僧俗が写っている。プレートからタンディン・ギャツォ、クンチョク・タルゲ、クンチョク・タクパ、クンチョク・ヤルゲ、ロラン・ルバ)などの名前が読み取れる……。
覚えておいてほしい。
「ンガバでは2008年3月から2011年10月17日までの間、当局の思うがままに殺害された者、暴行を受けた末に死亡した者、心身のプレッシャーや苦しみに耐えられず死んでしまった者、チベット民族の自由のために焼身抗議で亡くなった者が計34人いる。逮捕者は619人(この数字は一斉に逮捕されたキルティ僧院の僧侶300人を含まない)に上り、このうち108人が刑罰を受けた。大多数は僧侶で、作家や教師、編集者などの在家修行者も20人いる」。
(2011年11月2日、米議会でのキルティ・リンポチェの証言から)
ウーセルさんのブログではこの下に最近11月26日北京中央から孟建柱公安相(国務委員)がンガバに視察に来て、武装警官隊などの保安部隊を激励したという記事が詳しく報告されている。この部分、要約が東京新聞に載っていたので代わりにこれを転載する。
<中国公安相 チベット族地区視察 僧自殺受け>http://p.tl/o0JL
【北京=安藤淳】中国の孟建柱公安相(国務委員)は先月二十六日から三十日まで、当局の抑圧に抗議するチベット族僧侶の焼身自殺やデモが相次ぐ四川省のアバ・チベット族チャン族自治州アバ県などを訪れた。共産党指導部が同事件を重視し、断固として治安の維持を図る姿勢をアピールした。ただ、米政府系の自由アジア放送(RFA)によると、四川省に隣接するチベット自治区東部のチャムドで一日、地元政府庁舎が爆破され、チベット族僧侶(46)が自殺を図るなど、依然不安定な状況が続いている。
公安省によると、孟氏はデモなどの警戒に当たる警察官や武装警察らを激励。「諸君は社会の安定と調和を守る戦闘隊であると同時に、共産党の路線や政策を伝える宣伝隊だ」と述べ、民衆の中に分け入るよう指示した。
また、抗議デモの鎮圧のため一時封鎖され、僧侶数人の焼身自殺者を出したアバ県最大のチベット仏教寺院キルティ・ゴンパを訪問し、「愛国愛教の伝統を広め続け、民族の団結(融和)に貢献してほしい」と、治安維持への協力を求めた。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)