チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年12月2日
屠殺業者とチベット人が衝突、11人逮捕
カム、カンゼチベット族自治州ダルツェド県ミニャック・ラガカ(དར་མདོ་རྫོང་མི་ཉག་ར་རྔ་ཁ་)郷では、この1年程の間に遊牧民のヤクが多数盗まれるという事件が相継いで起こった。遊牧民たちは盗人を見つけようと夜中に見張っていたところ、中国人がトラックにヤクを積み込むのを目撃した。これを追跡すると、ある中国人経営の屠殺工場に行き着いた。また、そこで印の付いた自分たちのヤクの頭を確認した者もいた。
そこで、先月29日地域のチベット人たちはその屠殺工場に押し掛け、工場を閉鎖するよう経営者の中国人に迫った。その中国人はすぐに警察を呼んだ。警官が到着したので、チベット人たちは事情を説明し、工場を閉鎖することを求めた。しかし、警察は話をまともに聞くどころか1人のチベット人を殴り飛ばした。
これを契機に警官とチベット人が衝突し、警官1人が負傷、チベット人は警察の車を壊し、警官の銃を奪いごみ溜に捨てたりした。また、工場を壊し、道に肉を投げはなつなど派手に暴れた。
次の日の30日にも騒動は収まらなかった。当局はダルツェドから大勢の武装警官を呼び寄せ、11人のチベット人を逮捕。彼らが殴られながら連行されるのを人々は見守った。一帯は交通規制され、移動が制限された。
地区では10月、中国の役人が「高層ビルを建てるために、まもなく土地は没収される」と発表した。これに対し、チベット人たちは役人を呼び集会を開きこれに抗議した。話し合いは決裂し、チベット人たちはこの開発計画に抗議することを計画していた。
最近チベット各地に中国人が屠殺工場を作り、多量にヤクを殺していることに対し、チベット人が反感を抱いている、ということについてはウーセルさんも書かれている。参照過去ブログ>http://p.tl/0XGv
今日の記事についての参照は:2日付けTibet Times チベット語版http://p.tl/tl_6
2日付けdossiertibet英語版http://p.tl/OBaq
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)