チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年11月20日
デブン僧院長に無期/ラサ周辺の僧院弾圧強化/僧侶作家1年近く拘束
RFAに最近現地から伝えられた報告をいくつか紹介する。
<ラサ、デブン僧院僧院長に無期懲役、教師に20年の刑>
18日付けRFAチベット語版http://p.tl/ws47によれば、最近中国当局はペンボ出身のラサ、デブン僧院僧院長ジャンペル・ワンチュック(འཇམ་དཔལ་དབང་ཕྱུག་40)に無期懲役、アムド出身の教師クンチョク・ニマ(དཀོན་མཆོག་ཉི་མ་)に20年の刑を言い渡したという。
特に2008年3月以降、デブン僧院ではラサ蜂起を先導したとして、多くの僧侶が逮捕されたり、追い出されたりしている。しかし、これまで僧院長がこれほどまでの重い刑を受けたという報告は入ったことがなかった。
彼らが如何なる罪状により刑を受けたのかは不明であるが、あるデブン僧院僧侶によれば「2人は僧侶たちに、度々『ダライ・ラマ法王への信を説き。僧院は法王の教えに従って運営されるべきだ』と語っていたからであろう」という。
2人は現在タプチ刑務所に収監されている。
<期待は裏切られ、弾圧は強まるばかり>
同じく18日付けRFAチベット語版http://p.tl/mtgm その他によれば、デブン、セラ、ガンデンの3大僧院を初め、ラサ周辺の僧院には最近「民主キャンペーン隊」という役人のグループが巡回し、僧・尼たちに政治教育を強要すると同時に特に僧院の歳入に口を出し、僧院への寄付が集まらない方策が取られている。これにより、多くの僧院、尼僧院が食料にも困るという状況に陥っているという。
チベット自治区では最近党書記長が交代し、さらに「僧院、尼僧院には水道、電気の便を図り、僧侶、尼僧への健康保険、公的年金も整える」等と発表した。
このような話を聞き、僧・尼たちは書記長交代により少しは状況が改善されるのではないかと期待したという。しかし、実際には改善されるどころか、僧院への弾圧はさらに厳しくなるばかり。失望感が増大しているという。
19日付けRFAチベット語版http://p.tl/tGGcによれば、作家でもある僧侶テンパ・ロドゥ(བསྟན་པ་བློ་གྲོས་)、筆名ガンカ・キャンポ(གངས་དགའ་འཁྱམ་པོ་)は判決も言い渡されることなくラサの拘置所に収監し続けられている。
カム、ペルパル(དཔལ་འབར་རྫོང་)出身の僧テンパ・ロドゥは2010年12月29日ラサの通りを仲間の若者1人と一緒に歩いているところを突然警官により拘束された。仲間の若者はその日の内に解放されたが、彼はそのまま一年近く経った今も拘束され続けている。
彼は著書も多く、また度々知識人の会合を呼びかけていた。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)