チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年11月15日

米元外交官「チベットの文化ジェノサイドは本当だ」

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111115050224Q8写真はジョン・グラハム(phayulより)

15日付けphayul http://p.tl/p9lg

米元外交官であるジョン・グラハム(John Graham)は先月、10日間チベットを訪問し、チベットの文化ジェノサイドは本当であるという証言報告を書いている。

「先月、10日間に渡り、私は中国がチベットで何をしているのかを目の当たりにした……『文化ジェノサイド』と言われる報告は真実である。中国はチベット人たちの思考、伝統、習慣をすべて消し去ろうとしている」とグラハムは‘Goodbye Tibet?’と題された記事の中で述べる。(記事は>http://p.tl/cigp

暗号化した記録ノートを、汚れた靴下と一緒にした食料包装紙の上に書き、この元米外務省の役人はチベットを脱出し、今年3月以来11人の焼身抗議者を出している中国の弾圧政策を暴く洞察に満ちた記事を発表した。

「話を聞かせてくれるチベット人を見つけることは難しかった。それでも、彼らの表情や少ないが聞くことができた話から、彼らが自分たちの国を侵略し、されに意図的に彼らの文化と生活様式を破壊している中国に対し、どれほどの憎しみを抱いているかが分った」とグラハムは書く。

著書も多く、有名な発言者である彼は「ラサはポチョムキン村(*1)」と化しており、全ての高給な仕事は中国人が占有し、チベット人たちは残った低級な仕事に就くしかない、という。

そんな中でチベット人たちが微かな非協力レジスタンスを行っているとしてグラハムは「ラサ中心街の飾り立てた通りから数百メートル離れた場所に、石やセメントブロックでできた小さな家々に住むチベット人たちの一角がある。家の屋上に中国国旗を掲げない事は刑罰の対象となる。しかし、そこの3分の2の家は重い罰金を怖れず国旗を掲げていないのだ」と書く。

チベットの遊牧民と農民の強制移住についてもグラハムは注目し「チベットの(伝統的)家々は次々ブルドーザーで破壊され、即席のガブリニ・グリーン(*2)タイプ(Cabrini Green-type)の高層ビルに移動させられる」という。

「このような強制移住は身体的と言うより精神的に人を飢えさせる。アイデアは、特に若いチベット人たちに、彼らが誰であったかを忘れさせるためなのだ」とグラハムは記す。

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* 1、ポチョムキン村:ロシア帝国の軍人で1787年の露土戦争を指揮したグリゴリー・ポチョムキンが、皇帝エカチェリーナ2世の行幸のために作ったとされる「偽物の村」に由来する。主に政治的な文脈で使われる語で、貧しい実態や不利となる実態を訪問者の目から隠すために作られた、見せかけだけの施設などのことを指す。

* 2、ガブリニ・グリーン:1940年代にアメリカ、シカゴに建設された集合住宅。住居環境をまったく無視した計画により、後に犯罪の巣となった。失敗した集合住宅の象徴。

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彼は記事の初めに、「(このチベットの現状に)我々は注目すべきか?その方が良いと思う。世界の舞台で中国の自信は日増しに強まっている。チベットで中国が何を行っているかは、彼らの力が増す時、彼らがどのような行動を為すのかについて多くを語ってくれているからだ」と記している。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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