チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年11月15日
ネパール政府はチベット人の権利を全て剥奪する?
15日付けphayulhttp://www.phayul.com/news/article.aspx?id=30358&article=Nepal+to+‘slash+all+facilities’+to+Tibetans%3f
ネパールの首都カトマンドゥでチベットの僧侶が中国に対する焼身抗議を行った後、ネパール政府はチベット人難民の基本的人権まで制限するという検討を始めたという報告が入った。
Telegraph Nepalというネパールのニュースメディアに対し、あるネパール政府高官は「政府はネパールに住むチベット人に対し、移動の自由を含め、全ての権利を取り上げるかもしれない」と語った。
「ネパール政府は『一つの中国』政策を取っている。我々は隣国(中国)の利害に反する如何なる活動も容認しない」とネパール内務省のスポークスマンSudhir Kumar Sahは述べた。
「これは政府がチベット人に与えている全ての便宜を取り上げるかもしれないということだ。これには移動の自由も含まれる」と彼は続けた。
先週、一人のチベット人僧侶が中国によるチベット占領に抗議し、ダライ・ラマ法王のチベット帰還を求め、焼身を行った。
このスポークスマンの発言は、中国首相温家宝のネパール訪問を数週間後に控える今行われたものだ。
アメリカの海外援助金を決定する米議会歳出委員会の代表であるFrank Wolfは、今月初め、ネパール政府がアメリカへ亡命希望するチベット人に対する出国ビザを発行しない場合には、全ての援助金をストップするとメディアに語った。
「我々は削減するだけでなく、全てをゼロにするであろう」とWolfはレポーターに語った。(アメリカはネパール在住のチベット難民を何千人も受け入れると表明しているが、ネパール政府は出国を認めないという状況が背景)
「もしも彼らがそうしたくないというならば、彼らは我々と価値観を共有しないということになる。もしも彼らが価値観を共有しないなら、我々はドルをシェアしたくないということだ」とWolfは付け加えた。
ネパールには2万人のチベット人が暮らし、ここは中国の弾圧を逃れインドに亡命するチベットたちの通過ルートとなっている。
Phayulはカトマンドゥにおいてチベット人の家が突然捜査されたり、チベット人が恣意的拘束に遭っているという報告を現在受け取りつつある。
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ビデオはアルジャジーラが制作したネパールのムスタンを中心としたレポートであるが、この中、特に後半部分で増大する中国の経済的、政治的影響が描かれている。時間のある方にはなかなかお勧めのドキュメンタリー。47分。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)