チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年11月15日
ウーセル・ブログ「壊滅的な災いに直面しているもう一つの僧院—カルマ僧院」
ウーセルさんは12日に引き続き13日にもカルマ僧院の写真を沢山載せ記事を書かれている。
これも同じく@tibetweeterTYOさんが翻訳して下さったので紹介する。
原文:http://p.tl/Dlxb
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<壊滅的な災いに直面しているもう一つの僧院——カルマ僧院>
面临灭顶之灾的又一座寺院——噶玛寺(附图)
2011年11月13日
“私は17世カルマパの写真をカルマ僧院に持ってゆき、カルマパの僧院内への帰還を象徴した。仔細に見ると、少年僧がその写真を手に持っているのがわかる。カルマパが2008年に米国を訪れられた時に撮影されたものだ。僧侶たちは私たちに対してほんとうに、ほんとうに好くしてくれた。そして単純この上なく、あろうことか私たちに、カルマパはいつお戻りになるかと問うてきたのだ……”
写真はFacebookより。(クリックすると大きくなります)
撮影されたのはチベット東部・カム、チベット自治区チャムド地区カルマ郷のカルマ僧院。時期は今年9月だが、その1ヶ月後、1185年創建のこのカルマ・カギュ派の僧院(1950年代及び文革期に破壊され、1980年代に僧俗信徒によって再建された)は、壊滅的な災いに直面する。
アムド・ンガバのキルティ僧院に続き、カムのカルマ僧院が迫害に遭っているのだ。
10月26日の夜明けに非常に胡散臭い爆発事件が発生してから、カルマ僧院の全ての僧侶が当局に写真を撮られ、採血され、筆跡を取られた。数十名の僧侶が寺院から逃れ、山へ上って避難した。70数名の僧侶が逮捕され、今も音信は無く、行方は判っていない。
カルマ僧院の僧侶の人数は、当局の規定では128名だが、知る所によれば実際には200名余り。この僧侶たちの合同写真にはざっと130名ほどが写っているが、年若い僧侶ばかりで、年配の僧侶たち(聞く所によれば最年長は85歳)は誰も写真に写っていない。
アリス・コックさんがこれら2枚の写真を撮影し、ドルマ・ダワさんが説明を書いている。
これはカルマ僧院の一部分。第二世、第三世カルマパ・リンポチェが経の講義を行い法を説いた場所である。
これはカルマ僧院の一部の僧徒の合同写真。彼らは特別に単純な人々で、子供もたいへん多かった。海抜4千メートル以上の高山で、無縁無故の彼らが、一体誰の気に障ることがあるというのだろう?!彼らに対する迫害を停止して下さい、彼らは世と争うことのない僧侶なのだ!
カロリーナ・ロドリゲスさんがこの4枚の写真を撮影し、ドルマ・ダワさんが説明を書いた。
カルマ僧院一帯は富裕ではなく、僧院の維持は非常な艱難である。
訪れた時には、何人かの老人が廟内でコルラ(右遶)していた。僧院の僧侶に中国語を話せる人は一人もおらず、彼らが所謂国家或いは人民に対し、いかなる不利をはたらくことも、非常に想像に難い。何の為に、このように彼らに対しようというのか?!
これは護法神の正殿で、昨年ようやく再建。元の正殿は文革で殆ど全て破壊され、キャビネットの両扉だけが残った。
9月に行った時、ここはまだできあがっていなかった。客室に似ていて、その晩、私たちはここに泊まったのだ……
再度注意せねばならないのは、所謂“チャムド県カルマ郷の政府の建物で発生した爆発”事件が非常に胡散臭いものだということだ。3年前、即ち2008年にチベット東部・カム(チャムド地区ゴンジョ県キャベル郷、チャムド地区マルカム県)でも所謂爆発事件が発生し、尚且つその時も多くの僧侶が逮捕され刑罰を言い渡されたが、事実上は現地政府が造った“国会放火事件”なのであり、一方でチベット人の平和的抗議に“テロ活動”の濡れ衣を着せ、また一方で出世と金儲けのための称賛と奨励の機会を得て、政治的実績にしようというのだ。これらの腹黒い地方管理が修行者の血を惜しげもなく使って彼らの頭のてっぺんに載った官帽を赤く染めるのは、実に極悪非道で許せないことである!
関連エントリ:<関心喚起:カルマ僧院の僧侶逮捕、避難の現況>
http://woeser.middle-way.net/2011/11/blog-post_12.html
日本語訳前回ブログ
【写真を撮影、提供してくれたドルマ・ダワさん、アリス・コックさん、キャロライナ・ロドリゲスさんに感謝します。】
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)