チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年11月14日

ウーセル・ブログ「関心喚起:カルマ僧院の僧侶逮捕、避難の現況」/当局の陰謀か?

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gamasifengjingウーセルさんは12日付けブログの中で、最近チャムド、カルマ郷で起こったと言われる庁舎爆発事件に関し、1933年ドイツで起こった「国会放火事件」と呼ばれるhttp://ja.wikipedia.org/wiki/ドイツ国会議事堂放火事件一党独裁を目指すナチス党によって仕組まれた政治的陰謀として有名な事件を例に出し、今回の爆発事件も当局の陰謀である可能性が高いと主張されている。

何れにせよ、当局はすでに高僧はじめ多くの僧侶、尼僧を拘束している。彼らが今、偽の自白強要のために激しい拷問に遭っている事は確かであろう。

原文:http://woeser.middle-way.net/2011/11/blog-post_12.html
翻訳:@tibetweeterTYOさん

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20101021003403151117<関心喚起:カルマ僧院の僧侶逮捕、避難の現況>
2011年11月12日

カルマ僧院(噶瑪寺)はチベット東部・カム、チベット自治区チャムド地区カルマ郷にあるチベット仏教カルマ・カギュ派の祖寺で、チベット仏教の転生制度が始まった所でもある。チャムド地区三大僧院の一つで、第一世カルマパ・リンポチェ、トゥースム・キェンパによって1185年に創建された。

カルマ僧院はもともと深山の古寺であったが、文革以前にも最中にも破壊され、後の1980年代に再建された。現在僧院にいる僧侶の人数は、当局の規程によれば128名だが、実際は200名以上おり、最高齢は85歳、最も若い僧は15歳である。

2008年にチベット全土で、耐えきれなくなったチベット人の抗議行動が爆発してからというもの、チベットの情勢は日益しに悪化している。当局の圧迫政策が強まる中、アムドのンガバやカムのカンゼ、タウなどで、12人のチベット人僧侶・尼僧の焼身事件が続き、世界の関心を集めている。

10月27日、BBC中国語ネットは“チベット・チャムド政府のビルが爆弾に爆破された”と報道、記事では“爆破された政府の建物の壁には赤い文字で‘チベット独立’のスローガンが書かれていた”とされていたが、明らかにこの報道の見出しは、あまりにも驚くべきものだった。なぜなら他の報道では、“チャムド県カルマ郷の政府の建物で爆発事件が発生”と説明されていた。チベットに行ったことのある人なら皆知っているが、チベットの郷都はどれも皆大きくなく、郷政府の建物も粗末な平屋根のセメントづくりで、“ビル”などあろうはずも無いのである。

当局が海外メディア及びいかなる国際組織に対してもチベットに入っての調査や取材を禁止しているため、海外メディアは往々にして新華社の報道を転載する。そしてこれらの報道にはどれも、証拠となる現場写真が一枚も無い。爆発は午前4時に発生したとされ、怪我人も出ていない。

これは非常にうさんくさい爆発事件である。2008年にはチベット東部のカム(チャムド地区ゴンジョ県གོ་འཇོ་རྫོང་キャベル郷[ སྐྱ་འབལ་ཤང་、相皮郷]とマルカム県)でやはり所謂爆発事件(*1)が発生し、この時も多くの僧侶が逮捕され刑罰を言い渡されたが、事実上は現地政府の作り上げた“国会放火事件”であり、その目的は一方でチベット人の平和的抗議活動に“テロ活動”の濡れ衣を着せ、また一方で出世と金儲けのために称賛と奨励を得る機会とし、政治的実績とすることにあった。

3年前にゴンジョ県キャベル郷のタンキャ僧院( ཐང་སྐྱ་དགོན་པ་ 通夏寺)、マルカム県のウーセル僧院( འོད་ཟེར་དགོན་པ་ 維色寺)に対して行った迫害とまったく同じように、当局はカルマ郷のカルマ僧院に対し狂ったような迫害を展開している。事件の翌日には大量の軍警がカルマ郷に押し入り、如何なる人の出入りも厳禁し、カルマ僧院を閉ざし、僧院に出入りする道を封鎖した。僧院内の全ての僧侶が当局人員によって写真を撮られ、採血され、筆跡を取られた。

数十名の僧侶が夜中に僧院を逃げ出し、山上へ避難した。

最新情報によれば、8~9日前、武装した軍警を満載した車輛多数がカルマ僧院に突入、約70数名の僧侶を捕まえ、捕まえられた僧侶たちからの音信は現在も途絶え、行方が分からなくなっているという。

カルマ僧院から山上へ逃げ、避難している数十人の僧侶の状況も非常に緊迫している。冬の高原の気候は極度に寒冷であり、山上も大雪に覆われ、避難中の僧侶たちは飢えと寒さに悩まされ、困苦は耐え難いものとなっている。

しかし、カルマ郷を含めた付近の村々、甚だしきに至っては近くのナンチェン県(青海省玉樹チベット族自治州内)にまで、完全武装の軍人と警察が多数押し寄せ、幹部の指揮の下、チベット人家庭への捜査が行われている。

現在、カルマ僧院には年老いた僧侶たちだけが残っている。寺院及び僧侶の家庭は全て、もしも逃げた僧侶が僧院に戻ってこなければ、政府は既に捕まえた僧侶を銃殺刑に処すると警告した。

現地の人は「郷の政府の建物は爆破されたが、それは非常に粗末で低劣な建物であった。僧院の僧侶による爆破などであろう筈も無く、一体誰が爆破したのかは、役人の心の中では非常に明白なのである」という。

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*1、キャベの爆発事件については 参照:http://p.tl/PGxM 2人の僧侶に無期懲役、6人の僧侶に5~15年の刑
Tibet Times チベット語版http://p.tl/Opm8
RFAチベット語版http://p.tl/maBo

マルカムについては参照:過去ブログhttp://p.tl/tuM5

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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