チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年11月8日
3月焼身抗議を行った僧プンツォの家族に苦難
写真は亡命し情報を伝えたンガバ・キルティ僧院僧侶ロプサン・ラプテン(Tibet Timesより)
6日付けTibet Times チベット語版 http://p.tl/mx3M
当局は今年3月16日に抗議の焼身自殺を行い死亡したキルティ僧院僧侶プンツォクの弟で9月26日に焼身抗議を行った僧ロプサン・ケルサンを拘束しているだけでなく、父親と兄もどこかに連れ去った。
これらの情報は最近チベットから亡命し、ダラムサラの難民一時収容所に滞在中のンガバ・キルティ僧院僧侶ロプサン・ラプテンが明かしたものである。
彼によれば、3月16日に僧プンツォが焼身した後、当局はキルティ僧院から大勢の僧侶を逮捕し、刑期を与え服役させ、また一般のチベット人にも僧院へ近づく事を禁止する等、様々な規制を与えているという。
キルティ僧院の僧ロプサン・クンチョクと僧プンツォの弟である僧ロプサン・ケルサンが焼身抗議を行った後、当局は彼らを依然どこかに拘束中である。プンツォとケルサンの父親キャルツェは息子であるケルサンの行方を知ろうと役所に出かけたが、そのまま行方不明となってしまった。また、兄であるタシも自宅から姿を消し、そのまま、現在も行方不明のままである。
僧プンツォの家族の家には60歳の父親キャルツェ、50歳の母ゾクカル、87歳になる祖母カルモ、22歳のロプサン・ダルゲ、3年前に障害者となり今は杖をついている僧ジャンジュップ、最近焼身抗議を行ったロプサン・ケルサンとかつては7人の家族がいたが、内2人が焼身を行った後、当局は常に家族を脅し、最近父親と、別居していた兄も行方不明となってしまった。
彼らの所属するメウルマ村では全員に対しダライ・ラマ法王と亡命政府を批難し、かつ中国国旗を掲揚することが強要され、キルティ僧院では26項目に及ぶ愛国教育が依然続けられているという。
僧ロプサン・ラプテンはンガバ、メウルメ村出身で、僧プンツォと同郷。彼と同じ先生に付いていたという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)