チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年10月21日

法王と科学者の対話

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DSC_9399普通の宗教家とは異なりダライ・ラマ法王は科学好きである。仏教と科学は矛盾する部分より同一の部分の方が多いと思っておられる。元々仏教は創造主としての神を否定しこの世は縁起(因果律)によって生起すると、科学が発達するず~~と以前から言ってるのだから、この点では科学に先攻しているのだ。特に法王は科学者と対話することにより、仏教徒が最新科学を学び、かつ逆に仏教哲学や仏教心理学を科学者に伝えることにより、科学者に新しい発想を与えようとされている。仏教は科学の発展に寄与できると考えておられる。


DSC_9677今回で23回目となる「心と生命会議Mind and Life conferences」と名付けられた会議が、今月17日から今日(21日)まで、世界中の科学者等を集め、法王パレス内の集会室で行われていた。会議は5日間、昼食を挟み朝9時から午後3時までみっちり行われた。

今回のテーマは「環境」。議題は「エコロジー、倫理そして相互依存(縁起)」。特に「個人的選択が環境に与える影響」を考察することにより「生命維持機能を次第に失いつつあるこの地球の収容能力」に対する答えを見いだすことが今回の会議の目的である。

DSC_9613「この会議の目的は責任を伴う環境倫理を明確に言語化する機会を提供することである。効果的環境保護活動に対する科学的ケーススタディの最新データを分析することにより、相互依存(縁起)への理解を深めることが含まれる」とそのリリースで会議組織委員会は述べる。

ダライ・ラマ法王は、学者、活動家、環境科学者と対話しながら「生命を維持するグローバル・システムの人的破壊、工業エコロジーのレンズを通してみられる個人の役割から仏教哲学や他の伝統宗教の視点、環境活動家が直面する現実に至までの様々な次元をともに考察する」

DSC_9669「この会議が、この分野における新しい研究アイデアの形成と地球の危機に対する解決方法に対し意味ある触媒となることを願っている」と委員会は続ける。

この会議に出席する著名な学者はJohn Dunne, Associate professor at Emory University, Sallie McFague, Theologian in Residence at the Vancouver School of Theology in British Columbia, and Jonathan Patz, Professor and Director of Global Environmental Health at the University of Wisconsin in Madison 等々。残念ながら日本からのパネラー参加者はいなかった。

まあ、渡されたブロシャーには難しい単語が多い。
私は半日だけ、取材参加しただけなので、全体の内容についてはよく分からないのだが、何だか学会のような雰囲気だった。パネラーが発表し、その合間合間に法王が解らない英語の単語を隣の通訳に尋ねたり、パネラーに質問やら突っ込みを入れられる。それが終ると参加者が質問する、という進行方法。

DSC_9090法王は得意のジョークを何度も飛ばされ、頭が難しくなりながら慣れない英語に聞き入ってる、その他大勢のチベットのゲシェや選ばれた尼僧たちに息抜きの機会を提供されていた。

興味ある研究者の方はネットウェブにアクセスすれば、発表者ごとのテーマ、その内容すべてを聞くことができる。http://www.dalailama.com/webcasts/post/210-ecology-ethics-and-interdependence—mind-and-life-xxiii

DSC_9473環境を1つのテーマとするギャワ・カルマパはノートを取りながら聞き入る。

DSC_9028休憩時間、メディアのインタビューに答えるカルマパ

DSC_9653休憩時間に挨拶に来た学者と握手される法王

DSC_9562これはと思う写真はクリック拡大をお勧め

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筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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