チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年10月11日
遺体を家族に引き渡さず/カイン氏「命を捧げ満足だ。後悔していない」/チュペル氏も今日死亡
追記:ダラムサラ・キルティ僧院僧侶カヤック・ツェリンに今(インド時間午後6時)確認したところ、「今日午後2時頃7日に焼身自殺を行ったチュペル氏も死亡した」とのこと。
ンガバで7日に焼身自殺を行った2人の内カイン(最初カヤンཁའ་དབྱངས་と報道されていたが、その後カインམཁའ་དབྱིངས་と表記する報道の方が多い)が8日にバルカムའབར་ཁམས་の病院で死亡した。この知らせを聞き、ンガバ地区のチベット人が経営するすべての商店と飲食店は、喪に服すために3日間シャッターを降ろし続けた。
また、「多くのチベット人がカインの冥福を祈るために寺や僧院を訪れた。寺や僧院では3日間追悼会が行われた」とダラムサラ・キルティ僧院僧侶カヤック・ツェリンは伝える。
「カインの親戚は葬式を行うために遺体を渡してほしいと懇願したにも拘らず、中国当局は遺体を家族に引き渡す事を拒否し、その日(8日)の内に火葬。遺灰だけを家族に渡した」と現地のチベット人がRFAに報告。
新華社電は8日に「2人は病院で治療を受けている。命に別状はない」と報告した後、続報はないままだ。
カインの家族は家で葬儀を行うも、当局は僧侶5人のみ呼んでもいいと言い渡した。
「家の前には10人ほどの中国の保安員が立っており、お悔やみを言うために遺族を訪れようとする友人や支援者を追い返している」と僧ツェリンはいう。
「月曜日にはキルティ僧院の僧侶たちが、祈りを捧げるために遺族の家に向かおうとしたが、一族の長老から『家族はキルティ僧院の僧侶たちが来れば、問題が起きるであろうと脅されている。だから来ないでくれ』と言われ、これを諦めた」、「それで僧侶たちは遠くから祈りを送った」と同じく僧ツェリンは報告する。
ツェリンによれば、カインは焼身自殺する前に「チベットのために命を賭けたい」「ンガバの人たちは自分の命を心配しなくてもいい」と周りの人に話していたという。
同じく、現在重体と伝えられるチュペルも焼身自殺を行う数日前に回りの人たちに何度も、堪え難いンガバの状況を語り、チベットのために命を捧げた僧侶たちの話をしていたという。
カインは病院で死ぬ前に「自分がチベットのためにこうして命を捧げられたことに満足している。まったく後悔していないので、皆も悲しまないでくれ」と語ったという話がンガバの人々の間に広まっているという。
参照:10日付けRFA英語版 http://p.tl/kng7
10日付けTibet Times チベット語版 http://p.tl/REmP
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)