チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年9月14日
10年間獄に繋がれていたチベット政治犯僧侶、解放後に死亡
13日付けTibet Posthttp://p.tl/JqRJより。
カム、ソク・ゾン(索県、ナクチュの東240km)の僧侶イェシェ・テンジンཡེ་ཤེས་བསྟན་འཛིན་は10年の刑期を終え解放された後、9月7日に死亡した。彼は獄中で激しい拷問を受けており、解放されたときも重い病気を患っていた。一部の人は彼は解放される前に毒を盛られていたに違いない、という。
「ソク・ツェンデン僧院སོག་ཙན་དན་དགོན་僧侶のイェシェ・テンジンは、2000年に仲間数人と共に『自由チベット』等を訴えるパンフレットを配ったとして10年の刑を受けていた。2010年12月に刑期を終え解放された。彼はシッキムで行われたダライ・ラマ法王によるカーラチャクラ法要に参加したことで咎められてもいた」と亡命しているソク・ゾン出身のンガワン・タルパ氏はTibet Postに話す。
「家族と親戚は、この10ヶ月の間、病気の彼を様々な病院に運び込み、治療を試みるも、全て空しい努力であった。 彼は自宅で亡くなった」とタルパ氏。
「獄中で彼は拷問と激しい暴力を受け身体的に病み衰えていた。ある人は、チベット人の囚人に対し当局は、刑期が終わる前の健康診断の際にある種の毒薬を盛るのだという」
「ソク・ゾン出身の他の政治犯テンジン・チュワンも同じような病気で死んだ」とタルパ氏は言う。
「ソク・ゾンの政治犯の多くは解放後に重い病気に陥る」と他の地元のチベット人は言う。
(別件)2009年10月にゲルツェン、ワンチュク、ナムカという3人の若者がソク・ゾンで逮捕されたが、その後彼らは行方不明のままである。警察は彼らの家族に居所を明かさず、彼らの事は忘れるようにと言い渡したという。
現地からの匿名情報によれば、「警察は彼ら3人のインターネットやQQのやり取りを監視していた。彼らはダライ・ラマ法王の写真やスピーチを伝え合っていたらしい。警察はまた彼らがチベット圏の外や海外の個人と連絡を取っていると疑っていた」という。
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僧イェシェ・テンジン師の冥福を祈る。
パンフレットを配っただけの結果がこれ。
亡くなった僧イェシェ・テンジンが本当に毒を盛られていたかどうかは確認不可能だが、地元の人たちがそのように噂しているということは確かであろう。一般にチベット人は、ここ(ダラムサラ)でもそうだが、医学知識が余りになさ過ぎて、「病気」といっても何の病気なのか?を特定することが困難な場合がほとんどだ。
何れにせよ、刑務所で拷問を受けたり、暴力を受ける事は日常茶飯事であり、食事もまともではなく、病気にならないほうが稀であろう。また、医療機関のレベルも医者の治療意思も知れている。一旦重い病気になれば回復は難しいケースが多いと思われる。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)