チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年9月6日
ウーセルさんに再び国際的栄誉賞
このブログでも主に雲南太郎さんの翻訳で度々そのブログを紹介しているチベット人作家のウーセルさんが、またも国際的賞を受賞された。
以下、6日付けphayulより。http://p.tl/S5Ji
怖れを知らぬチベットの作家、ブロガーであるウーセル女史は、オランダにあるクラウス王子基金から2011年度クラウス王子賞を授与された。
彼女のことを「勇敢なチベット人作家」と呼び、同基金は9月4日付けリリースの中で「チベットの複雑な現状に対し」44歳になるウーセル女史は「ユニークな視点」を提供したという。
さらに「その沈黙させられ、弾圧された人々のために発言した勇気に対し、その文学的資質と政治的ルポの説得力のある結合に対し、そのチベット文化を記録し、明確にし、支持したことに対し、またそのチベットの民族自決、自由と発展に積極的に参加したことに対し、当基金はウーセル女史に栄誉を与えるものである」とリリースは記す。
オランダのクラウス王子の栄誉を冠するクラウス王子基金は1996年から毎年、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、カリブ海諸国の中で文化、開発、環境、社会分野で卓越した業績を達成した個人、グループ、組織を対象に賞を授与している。
クラウス王子賞は毎年11人の「危険を冒しながらも、他の人々を鼓舞し、表現の自由の限界を広げた」文化的パイオニアに対し与えられる。
オランダにあるICT(国際チベットキャンペーン)ヨーロッパ本部の所長であるツェリン・ジャンパ氏は、9月5日付けのリリースの中でウーセル女史に与えられた賞は「非常に相応しいものだ」と語った。
「ウーセル女史は中国の圧政下にあるチベットにおけるもっとも雄弁で激烈な評論家だ……この重要な賞は、単にその作品の中で真実を表現しただけで、長期の刑を受け、拷問を耐え続ける多くの他のチベットの作家や知識人に与えられたものでもある」とジャンパ氏は言う。
2008年、中国の統治に対する大々的な抗議デモとそれに対する暴力的弾圧が起こったとき、ウーセル女史のブログは世界的な主要情報源となった。チベット内地と連絡を取りながら、ウーセル女史はその抗議活動、人権侵害、超法規的殺戮に関するレポートを日々更新し続けた。抗議活動がピークに達した時にはウーセル女史のブログに300万人がアクセスした。さらに、彼女の日々のアップデートは様々な言語に翻訳され広まった。
現在北京に暮らす彼女は常に当局から監視されて、そのウエヴサイトは度々当局により遮断されている。2007年、ノルウェー作家協会から「表現の自由賞」を贈られた時、その授賞式のためオスロに行くことも、また2010年、国際女性メディア基金から「ジャーナリズム勇気賞」を与えられたときニューヨークに行くことも、中国当局は許可しなかった。
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今年のクラウス王子賞受賞者一覧>http://p.tl/Kuff
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)