チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年8月22日
チベット人女性が日本人僧侶を介し、ビルマ人活動家を啓蒙
最近、TWA(チベット女性協会)執行部の2人がタイでビルマの少数民族活動家たちに民主的選挙の仕方についての連続講義を行った。
実はこれを仕組んだのは日本人の僧侶井本氏である。井本氏は四方僧伽という組織を立ち上げ、同じ僧侶同士の連帯を軸に、主にチベットとビルマを対象に圧政に苦しむ人々を支援することに非常な努力を払っておられる。彼が様々な危険を顧みずビルマの民主化のためにチベット人女性を引き込み民主的選挙への啓蒙活動をされた事を称賛する。
今回のチベット女性協会の働きは井本氏を通じ逐一報告を受け取っていた。しかし、タイ国内であろうと、相手が非常に危険なビルマ政府であるので、報告を表に出す事は憚れると思われた。実際、ワークショップもビルマ政府の妨害を避けるために、素早く転々と場所を変えながら行われたのだ。
が、昨日TWAは今回の活動をプレスリリースとして発表し、今日のphayul http://p.tl/OXbuにも記事が出て、さらにこれを日本語に訳された方もいるhttp://p.tl/Hvm4ので、私も井本氏の働きを讃えるために書く気になったという訳だ。
TWAは亡命チベット社会において、去年6月に議会総選挙と首相選挙に先立ち「mock election 疑似選挙」という選挙の予行演習のようなものを行った。これはチベット人社会への民主化教育の一環であった。直接的には選挙の投票率を上げる目的があった。このノウハウを今回ビルマの少数民族の人々へ伝える事により、彼らに民主化への具体的なモチベーションを高めさせる効果を狙って行われたのだ。
実際、チュバ姿の2人のチベット人女性の講義は、ワークショップに参加した若者中心の活動家たちを大いにインスパイアーする効果があったということだ。
井本氏はさらに、「ビルマが民主化された暁には、現在益々困難となっているチベット難民越境ネパール・ルートの替わりにビルマ・ルートも可能となるであろう」との夢を語られている。
井本氏は「ビルマの民主化のカギを握るのは少数民族とビルマ族の民主化に向けての連帯だ」と認識され、これに向かって目に見える活動を行われている。
道はもちろん険しく長いであろうが、チベットとビルマ、日本が連帯するというこの希有な活動が益々盛んになる事を願う。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)