チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年8月16日
再び1人の僧侶が焼身自殺
写真は今夕、ダラムサラで行われた僧ツェワン・ノルブの追悼集会より。
現地からの複数の電話情報によれば、今日(8月15日)現地時間12時半頃、カム、タウ(རྟའུ་ 四川省カンゼチベット族自治州道孚)の中心街で1人の僧侶が中国政府への抗議デモの後、焼身自殺を計りその場で死亡した。
ニンツォ僧院(ཉི་མཚོ་དགོན་པ)の僧ツェワン・ノルブ(ཚེ་དབང་ནོར་བུ་29)はチベットの自由とダライ・ラマ法王の帰還等を要求するチラシを撒きながらスローガンを叫び、10分ほど行進を行った後、地方政府庁舎に近いチュメ橋の上でガソリンを飲み、身体にガソリンを吹きかけ、火を付けた。彼は燃え上がりながらも、「チベットに自由を!ダライ・ラマ法王に長寿を!法王の帰還を!」と叫び声を上げ続けたという。
彼はその場で死亡したと伝えられている。その後、遺体は僧院に運び込まれ、法要が行われたが、当局は僧院に大勢の武装警官を送り込み、僧院を包囲し、彼の遺体を引き渡すよう要求した。僧院側はこれに応じず、緊張が高まっているという。
現地からの情報は数時間後には完全に寸断され、現在は電話もネットも通じなくなっているという。
先の7月6日、ダライ・ラマ法王誕生日にタウではニンツォ僧院の僧侶を中心に法王誕生日を祝う式典を行おうとしたが、これを当局は妨害した。
その後、当僧院の電気や水道が当局により止められた。このような状況がこの事件の背景にあると思われている。
現時点(インド時間15日午後10時)、関連記事/共同>産経:http://p.tl/azlq
BBC: http://p.tl/8MC8
Tibet Times チベット語版:http://p.tl/YMj8
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)