チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年6月6日
ダライ・ラマ「恐怖による統治」と
以下、この番組に関する6月5日付けRFA英語版記事:http://p.tl/6ZWTの訳。
ダライ・ラマ曰く状況は「悪くなるばかり」と
保安政策と文化・教育への弾圧を強化することにより、当局はチベットに「不安による統治」「恐怖による統治」を行っている、とダライ・ラマは中国当局を非難した。
さらに、北京との1979年からの対話は「肯定的結果をもたらさなかった」、チベット内部の状況は「悪くなるばかりだ」と語った。
アメリカのテレビ番組の中でチベットの状況について質問され、ダライ・ラマは「現在(チベットには)中国の軍隊が益々増強されている。保安要員の数も増えている… 不安による統治、恐怖による統治が行われているのだ」と答えた。
「チベット語教育は締め付けられ、政治的再教育キャンペーンが強化されている。我々は今、この『半・文化大革命再来』を憂慮している」と、ダライ・ラマは日曜日に放映されたアメリカのWHUT-TV「Ideas in Action with Jim Glassman」のおけるインタビューで語った。
文化大革命は中国史の中の暗黒時代だ。1966年、指導者毛沢東により開始され、中国をその後10年間混乱に陥れた。数百万に及ぶ労働者、役人、知識人が地方に追いやられ、厳しい労働に従事させられた。そして、多くの者たちが拷問に遭い、殺され、自殺に追い込まれた。
強硬路線
ダライ・ラマは北京の「強硬で、偏狭で、短絡的な」政策が2008年の致命的な反乱を引き起こしたと指摘する。
また、(チベット自治区以外の)チベット人地域にも「より厳しい」方策が行われているという。
「数日前、ある情報を聞いた」と、地区の警察官がチベット人学校(ビデオより原文を訂正)に押し入り、全てのチベット語の本が「没収され」、学生たちは「政府が発行した本だけ」を所持するよう命令されたという話を引用し、「だから、締め付けは強化されているのだ」と話した。
南西中国では、1人の僧侶が中国の統治に抗議し、焼身自殺を行った時から始まった弾圧の中、キルティ僧院の僧侶300人が保安部隊により拘束され、現在も武装警官隊が僧院を封鎖している。
四川省のチベット人が多く住むンガバ県の緊張は2008年3月以来の高まりを見せている。
ベテラン・ジャーナリスト、学者、外交官である番組司会者Jim Glassmanの「これらの(中国当局の)政策に対抗するための何らかの手段がチベット人にはあるのか?」との質問に対し、ダライ・ラマは「彼らは『共産党による独裁主義的システム』の下で『困難』な状況に直面している。そこでは言論の自由は『不可能』なのだ」
「デモをやる以外の選択は無いのだ」という。「しかし、デモを行う者は問題を起こす者と見なされ、逮捕され、『厳しい拷問』に遭うのだ」
「開放された者たちの多くは『手足の骨折』やその他の傷害を訴えている」
と答えた。
アメリカが示す懸念
先週、アメリカ政府の高官は議会に対し、「近年、中国のチベット地域における宗教弾圧は劇的に悪化した」と報告した。
「我々は中国の、特にチベット自治区とその他のチベット人地区の人権状況の悪化に対し非常に懸念している」と民主、人権、労働局副アシスタント秘書のDaniel Baerは語った。
彼は最近のチベット語教育への規制強化、チベット仏教の宗教行為に対する厳しい規制、著名な非政治的チベット人たちの逮捕について報告した。
「チベット人地域における宗教的行為に対する規制は、近年劇的に悪化した」と述べた。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)