チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年6月4日
チベット人作家タシ・ラプテンに4年の刑
2009年7月26日、故郷のゾルゲで突然失踪し、後バルカムで拘留されていることが判明した、チベット人作家タシ・ラプテンབཀྲ་ཤིས་རབ་བརྟན་(ペンネーム/テウランཐེའུ་རང་)に6月2日、ンガバ中級人民法院は4年の刑期を言い渡した。彼の家族は法廷に入ることを許可されなかったという。
参照:6月3日付けRFAチベット語版http://p.tl/kv6_
彼は蘭州西北民族学院の学生であり、発禁となった雑誌「シャル・ドゥン・リ(ཤར་དུང་རི་東方のホラ貝の丘)」の編集者の1人であり、また短編集「血書༼ ཁྲག་ཡིག ༽」の著者でもある。
彼については過去このブログに何度も書いている。詳しくは以下を参考にしてほしい。
http://p.tl/9bWx
http://p.tl/pwtK
http://p.tl/uWn0
同じく「シャル・ドゥン・リ」の編集に関わった彼の仲間たちは2010年12月末、すでに「国家分裂煽動罪」により3~4年の刑を受けている。http://p.tl/orpc
ここでは「血書」に発表された彼の2編の詩のみを再び紹介するにとどめる。
原文:http://p.tl/0j21
翻訳:細野さん
血に染まる人
――自由のために命を捧げた者たちへ贈る――
心は朝露のように澄みきっているが
言葉や両手は枷鎖の中で沈黙している
至る所で穴の開いた自由を嘆いている
地面に倒れた一つ一つの死体は燃え盛る炎のようである
顔を真っ赤にしながら瞳は自由の光を探し求め
わずかに動くそののどがやはり宣言している
血に染まった手はまるで美しい花の刀を握り締めているかのように
2009/07/08
暗黒の内外
――崗尼(アムドの村の名)と崗尼のひとたちへ贈る――
花の季節が訪れる
しかしここは依然として冬の山を越えられずにいる
人々はまるで古ぼけたテントの中で
寒冷の歳月に耳を傾けているかのようだ
外を吹いているのはなにも砂埃だけではない
妻に対しての少しの私語でさえ盗聴を恐れ憂慮する
そう、周囲には暗黒と恐怖が渦巻いている
そして小心翼翼と自分の気持ちを閉じ込める
鋭い目がのぞき見ている
思惟と勇気で命の光を磨こう
友よ、暗黒の内外だ、絶えず自分の片腕にまで注意せよ
2009/03/25
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)