チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年4月22日
キルティ僧院に特殊警察が突入、300人以上の僧侶が連れ去られる
今日の亡命政府公式サイト(中国語版)より。翻訳@uralungta
http://p.tl/clcQ
昨日(21日)夜、中国共産党の特殊警察(武装警察の特殊突撃部隊)がキルティ僧院に突入、数多くの僧侶が逮捕連行された。今朝(22日)早朝までに既に300人以上の僧侶が捕らえられ、消息不明。そのほか、まだ数多くの無印の軍用車が僧院の外に停まっている。チベット人は、当局がさらに多くの僧侶を逮捕連行するだろうと心配している。チベット・ンガバのキルティ寺院の状況は深刻な危機に直面している。
速報によれば連行された僧侶の数は500人に上ったとも。
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「中国当局が僧院から僧侶たちをどこかに連れて行こうとしているらしい」という噂は予てより地元のチベット人たちの間に広まっていた。12日には、これを阻止しようと、門前に集まったチベット人たちが暴力と警察犬により排除させられた。昨日の情報によれば、今も僧院に続く道のそばには老人を中心に約200人のチベット人たちがこれを阻止しようと寝泊まりを続けているという。
いよいよ昨夜からこれが現実のものとなったようだ。当局は「愛国再教育」により目を付けた僧侶たちをどこか他の拘置所に送り、たっぷり「教育=拷問」を加えようとしていると思われる。「一体何のために!?」と問わずにはおれない。
この対立・緊張の高まりは直接的には僧プンツォの焼身自殺に始まる。僧プンツォがなぜそのような何よりも大事な自分の命を捧げてまで中国に抗議を行わなければならなかったのか?この元を辿れば、それは1951年に始まった中国によるチベット侵略に辿り着く。このンガバだけに話を限定しても、中国軍は1958年、この地でチベット人に対しジェノサイドを行った。近く2008年にもデモ隊に無差別発砲し妊婦、子どもを含め少なくとも10人を殺している。
元々チベット人は忍耐を知らない人々ではない。耐え続けている。また、それが押さえきれなくなったときにも、法王の教えに従い決して武器を取らず、平和的手段で問題を訴え続けている。
中国当局は今の所、「問題を解決するとは相手を恐怖で黙らせる事だ」という発想しか持ち合わせていない。弾圧の対象を挑発し、彼らが立ち上がれば、思うつぼ、軍隊や武装警官を動員できる。仕事が増え、予算が増える。何と言う構造、文化であろうか!
今夕もこれから、ダラムサラでは困窮の中になるキルティ僧院の僧侶たち、ンガバの市民たちへの連帯を示すためのキャンドル・ライト・ビジルと集会が行われる。
恐怖で黙らせるという手段はチベット人には通じない、彼らは勇敢な人々でもあるのだ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)