チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年4月18日
厳しい「再教育」が続くンガバ・キルティ僧院
写真はンガバの町の全景(Google Earthより。二枚目も)。左上の一角(というか広大な敷地)がキルティ僧院。
ダラムサラのキルティ僧院の情報係カヤック・ツェリンがRFA放送の中で最新情報を伝えていた。これを纏めた記事が17日付RFAチベット語版http://p.tl/fotWとTibet Timesチベット語版http://p.tl/PVC9に掲載されていたので、この2つに基づき以下要約報告する。
ンガバ(རྔ་པ་、阿壩)キルティ僧院内では今も厳しい「再教育」が行われている。17日にはンガバ県の上役を始め地区やその周辺の学校の教師まで動員、総勢約800人が押し掛けた。彼らは「僧院を壊すか、壊さないか? 法門を閉ざすか、閉ざさないか? についてこちらから話すことは何もない。すべてはお前たちの態度にかかっている。今も外部に状況を知らせている者がいるらしいが、けしからんことだ」と述べたという。
17日には、集会の中央に一人一人僧侶が立たされ、順番に尋問を受けた。しかし、結局当局が望むような応えが得られなかったとして、「まだまだ、考えが改まっていないようだ。これから長くこの再教育が続けられるであろう」と話たという。
12日に町のチベット人たちが僧侶たちを守ろうと僧院の門前に集まったとき、彼らは「我々は命を掛けて僧侶たちを守る」と話した。これを聞いた警官は「じゃ死んでも良いという者は拇印を押せ」と言った。これに答えて約300人のチベット人が我れ先にと列を作り拇印を押し始めた。これを見て警官もこれを止めたという。
3月20日から僧院内の病院が閉鎖され、僧侶たちは治療を受ける事ができなくなった。僧院の北の門は出入りできないようにコンクリートで固められた。食料事情は学堂ごとに違いがあるようだが、ある学堂では数日前から食料が完全に尽き、他の学堂から回してもらっているという。
3月16日からこれまでに100人以上の僧侶が行方不明になっているという。
ダラムサラでは昨日からTYC主催で、このキルティ僧院に連帯を示し、中国当局に僧院からの即時撤退を求めるための24時間交代チェーン・ハンストが行われている。国連に要請書を提出する署名活動も行われている。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)