チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年4月12日
ザムタンで抗議のチベット人に武警が暴行・1人死亡/キルティ僧院は兵糧攻め、逮捕者続出
4月8日、ンガバに接するアムド、ザムタン(壌塘県)ワルマ郷の公安事務所の前で、チベット人約30人が中国政府に抗議しチベット独立を要求するデモを行った。これを鎮圧するために武装警官隊が出動し、デモに参加していたチベット人たちに激しい暴行を加えた。その結果1人が重傷を負い、病院に運び込まれたが、間もなくそのチベット人は死亡したという。これを知った地元のチベット人約千人が再び抗議デモを行った。
(この情報は最初現地と連絡を取ったダラムサラ在住のチベット人がVOTに伝えたもの。後4月11日付けTCHRDのリリースにも発表された)
ザムタンでは3月23日にも約100人のチベット人によるデモがあり少なくとも8人が逮捕されている。http://p.tl/RccX
その他、昨日付けのTCHRD(チベット人権民主センター)リリースhttp://p.tl/Nw2M では僧プンツォの焼身自殺後厳しい制裁を受け続けるンガバ、キルティ僧院の現状が報告されている。
それによれば、現在僧院は約800人の武装警官に包囲され、さらに僧院の回りは鉄条網により完全に囲まれ、出入りが禁止されている。中には約2500人の僧侶が閉じ込められたままとなっており、食料が尽き始めているという。これを助けようと外のチベット人たちが食料を僧院に運び入れようとしても追い返され、僧院は兵糧攻め状態。
ここままでは近いうちに僧侶たちが何らかの反乱を起こす可能性があるが、当局側はこれを待ち構え、そのときはさらに凄惨な弾圧を行うことが考えられると言われている。今のところ僧院側は僧侶たちに挑発に乗らないよう静かに耐える事を諭し、大きな混乱には至っていないという。
しかし一方、当局は僧院内で厳しい再教育キャンペーンを行い、逆らう者を次々に逮捕している。4月8日には3人が逮捕され、今日(12日)も新たに10人の僧侶が逮捕されたという情報が入っている。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)