チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年4月7日
続・ジェクンド(玉樹)の抗議デモ。参加4千人か?
震災一周年を前にジェクンド(ケグド、ユシュ、玉樹)で4月1日に始まった抗議活動に関する続報が入っている。
抗議は3日まで続いたという情報と4日までという情報がある。また、参加人数についても、4日付けのRFAチベット語版では千人以上と書かれ、5日付けの同じRFAの英語版では300人となっている。以下に紹介する6日付けRFA中国語版では3~4千人となっている。コンタクト先により情報は一定していないようだ。
これから先、温家宝首相が現地入りするらしいが、その前後に外国メディアも現地に入る可能性があるのでそれらの情報にも期待したい。温家宝が来るとなると警備も一段と厳しくなり、緊張は高まるばかりであろう。
以下は6日付けRFA中国語版:原文http://p.tl/T3zQ
翻訳は宇宙犬(@tibet_news_jpn)さんが引き受けて下さった。
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<玉樹の地震被災地区で4千人の被災者がデモ、数十人のチベット人が逮捕され、多数が殴られ負傷>
青海省玉樹の地震被災地区で、4千人近いチベット族村民が、地方政府が彼らの居住地に新しい家屋を建設し、彼らを他郷に移住させようとしていることを不満とし、先週金曜から4日間にわたり抗議。当局が武警と武装公安を出動させた。在外チベット人が(現地からの情報を)RFAに伝えた所によれば、40名余りが逮捕され現在も行方不明、多数が殴られ負傷。現地のチベット人も証言。
玉樹州結古鎮の地震被災地区では、先週の金曜日から現地のチベット人が4日連続で座り込みのデモを行い、倒壊した彼らの住居に新たに建物を建設、彼らを
他郷に移住させようとする当局に抗議。
インド・ダラムサラのチベット人、ツォコ氏が今週水曜RFAに伝えたところによれば、地方政府は土地は国家のものだとの理由で、チベット人を元の居住地から離れさせようとしている。「1日から4日まで、3-4千人の地方人民が、彼らの宅地に絡む原因から地方政府に反抗。地方政府は昨年地震の発生した場所に新しい建物を建てようとしており、土地の50%は国家に属するものであり当地の人の所有ではないと宣言しているが、彼らはそれに反発しているのだ。なぜ政府はそんなに広い土地を持ち去るのか、と」
ツォコ氏は現地からの情報を引用し、今週月曜に当局が武警を出動させ、40数名のチベット人を逮捕、現在に至るまで彼らの行方が分からなくなっていると語った。「最も良い場所が全て政府に持ち去られるからこそ、現地の人達は反抗するのだ。4日の晩に武警が現地に到着、その後40数名の人たちが逮捕された。行方不明の人たちが誰なのかも分かっていない。彼らの集まっている場所に車が来て、多数の人を殴って負傷させた。恐らく頭や脚などをやられたのだろう。彼らからの情報によれば、政府と武警の部隊が、抗議していた人たちを鎮圧したということだ」
記者は州政府のオフィスに電話をかけたが、身分と質問を聞いたとたん、官吏は慌ただしく電話を切った。
記者:こんにちは。州政府でしょうか?
官吏:どちらさまですか?
記者:記者です。チベット人の抗議のことについて伺いたいのですが。
官吏:こちらは州政府ではありませんよ。間違い電話ですね。
記者は現地のタシという名のチベット人に状況を尋ねた。
記者:千人以上のチベット人による抗議があったそうですが。
タシ:ええ。
記者:逮捕されたチベット人はいましたか?
タシ:いました。
記者:何人くらい?
タシ:私たちにはわかりません。人がそう言ってただけです。
記者:殴られて負傷した人は?
タシ:聞くには聞きましたが、見ていません。
記者:今日も続いていますか?
タシ:知りません。
《西蔵時報》によれば、今月1日午前9時頃、千人以上の地震被災民が玉樹州政府の前に集まり、手には「土地の自主的使用権を返せ」、「公正に問題を処理せよ」といった標語を掲げ、「死よりもむごい仕打ち」などのスローガンを叫びながらデモを行ったという。報道では、抗議活動は中共が地震を利用して移民を進め、当地におけるチベット人の権益を侵犯することに関係するとされている。
抗議者は、当局は既に玉樹地震被災地区面積の約50%を没収すると下達、大量の中国(漢族)移民を送り込み、玉樹鎮の中心街を移民区に変え、チベット人の居住を許可しない計画を立てていると語っている。
記者:もとの居住地が地震帯の上だから他の土地に移される、ということではないのですか?
タシ:私にはよく分かりません。政府機関に尋ねては。
記者:住民は最近不満に思うことがあって、3-4日連続して座り込みを行ったと聞きますが、そうですか?
タシ:分からないとしか言えません。
別のチベット人が話してくれたところによれば、彼らは今なおテント暮らしが続いており、新しい家に住めるまでには2、3年かかりそうだという。「家を建てるお金はありませんから」。
記者:政府からは援助はありましたか?
チベット人:ガスです。テントの中に。
記者:新しい家が完成するまでに何年? 援助はあるのですか?
チベット人:まだ2、3年はかかるでしょうね。
記者:あなたがたは元の場所に家を建てられるよう要求しているのに、政府が同意しないということですか?
チベット人:そういうことです。申請はしたのですが、政府は、何の証明(不動産証明や土地使用証)も持ってない、何の証明も持ってないだろうと。
記者:何度も申請したのですか?
チベット人:そうです。まったく役に立ちませんでした。
(RFA 喬竜特派員取材・報道)
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追記:
ジェクンドの人々は今も多くの人たちがテント暮らしを強いられている。そのテントも僧院が提供したものが多いようだ。
参考:写真、極寒の冬も耐えたお年寄りたち。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)