チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年3月4日

中国のHIV感染者:劉喜梅さんの独白ビデオ・艾未未制作

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以下、@uralungtaさんの解説

 中国を代表する現代芸術家で社会活動家、艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏が昨年11月発表したドキュメント「喜梅(シーメイ)」
http://www.youtube.com/watch?v=uM6iOu4Th_wに日本語字幕がつきました。

 12分55秒の映像は、10歳の時に大けがの治療のための輸血がもとでHIVウイルスに感染した河南省の女性、劉喜梅さんの独白を撮ったもの。貧しい農家の女の子にたまたま降りかかってしまった「怖ろしい病気」は、そのまま中国のHIV感染者が置かれた現状の縮図となります。わずか十数分の問わず語りのなかに、貧困と無知、偏見、医療制度の不備、など、弱者に降りかかる社会が浮き上がり、それに屈せず立ち向かう劉喜梅さんの決意に心打たれます。必見。


 詳しくは、訳したTakeuchiさんのブログエントリ「『血の禍』 ある中国エイズ患者の軌跡」
http://www.digi-hound.com/takeuchi/item_50.htmlへ。
電子ブック版はここから
http://www.digi-hound.com/bk/

 ドキュメント「喜梅」、手記「血の禍 ある中国エイズ患者の軌跡」、また劉喜梅さんについては上記ブログで詳しく読めるので、日本語化された経緯をご紹介。

 Takeuchiさんが「喜梅」の翻訳と日本語字幕をするはめになった(失礼)そもそもの発端は、ツイッター。毒舌と多弁で知られるアイ・ウェイウェイのツイート( @aiww )に惹かれたTakeuchiさんが、その 中国語のつぶやきを日本語に訳してツイッターで紹介していたところ、突然、「これも訳して下さい!」とメールが送られてきたのだそう。メールの主は、劉喜梅さんを支援する女性人権活動家の葉海燕さん(ペンネーム:流氓燕 @liumangyan )の友人で(本人でさえない!)、「これを訳して日本の人にも広く知らせて!」だったんですと。

 ※中国では、本人の了解も取らずに「誰かこれをお願い!」と広めちゃうのはよくあることみたい。私にも、まったく知らない人から「読売新聞の取材を受けて福建省の冤罪被害者3人のことが日本語の記事になったんだけど、日本語が分からない、この記事を中国語に訳して!」と突然ツイッターで私宛ての発言を飛ばされたことがあり、発言をたどったら当事者でもなんでもない人。相手を見て頼んでくれ(中国語訳なら中国人のほうが早くてうまいに決まってる)と頭を抱
えた(笑)

 で、話を戻すと、Takeuchiさんに送られてきたのは、劉さんの手記。パソコンなど触ったこともなかった当時の劉さんが、携帯電話で自分の思いをせつせつと打ち込み、流氓燕さんに送り続けた一連のショートメール。Takeuchiさんは「あまりの長さにひっくり返りつつ、内容の悲惨さ、凄まじさに驚き、同時にその運命に屈しない劉さんの元気さに感動して、ご指名でもあるし、と思って一気に訳した」んだそうだ。

 流氓燕さんのツイッターを読むと分かるけれど、流氓燕さんは昨年、私財を投じて劉喜梅さんのためにアパートを借り、劉喜梅さんはきちんと治療も補償も受けられていないHIV患者の互助組織をつくって同じような境遇の人たち同士助け合おうと動き出した。パソコンも習い、ついに自分でツイッターも始めた( @xi_may )!
 Takeuchiさんの日本語訳は、彼女が立ち上がっていく過程と同時進行になっていて、どきどきしながら体験を共有させていただいたのでした。

 アイ・ウェイウェイ「喜梅」の日本語字幕化はそのころから考えていたものらしいけど、ごく普通の田舎育ちの(つまり言葉遣いや発音もくせのある)女性が、つっかえたり涙ぐんだり言葉を探しながら話し続ける映像を、先行する中国語字幕も英語字幕もないなかで日本語化するのは、プロフェッショナルでも難しい作業だったことと思います。感謝。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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