チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年2月26日
北朝鮮:生きるために草を食べる
北朝鮮の話題をこのブログに書くのはおそらく初めてと思う。
専門ではない地域のことを書くのは気が引けるが、最近続けて気になるニュースが入っていたので取り上げることにした。
今、リビアでカダフィ下ろしのために民衆が命がけで戦っている。カダフィは世界に名高い悪徳独裁者であるしその政権が倒れる事を普通の人は応援する。
リビアもひどい国だったであろうが、北朝鮮に比べればまだましな方。なにせ、人々が飢餓状態であったわけではない。世界を見渡し、今最悪な独裁国家といえば、北朝鮮であろう。
その北朝鮮で最近続けて当局に対する抗議行動が平安北道を中心に起きている。14日には定州市、竜川郡一帯で住民数十人が夜陰に乗じ「電気とコメをよこせ」と要求する騒動を起こしたのに続き、18日には平安北道新義州市での市場の取り締まりで、住民数百人が当局と衝突したという。詳しくはhttp://www.chosunonline.com/news/20110224000017
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110224-00000519-san-int
この騒動に対しうら(@uralungta)は「市場の物売りへの酷烈な取り締まりがコップに満ちた苦しみを溢れさせる最後の1滴となるのはチュニジアの構図と全く同じhttp://goo.gl/Fkl87 。闇市場(自由市場)は弱い人たちの最後の生きる手段なんだなと切なくなりました」とコメントされた。
北でのこの騒動に中東の動きが影響しているとは思われない。デノミ失敗による物価高騰と相まって、まさに、食う事ができず、生きる最後の手段まで奪おうとする当局に対し、恐怖よりも苦しみから来る怒りが勝り爆発したのだと思う。しかし、そのような哀れな人々に対しても当局の弾圧は情け容赦はない。
北の後ろ盾である中国の公安相は、最近北に飛び「好ましくない現象」が出現したら「容赦なく鎮圧するため」のデモ「封じ込め法」を伝授したという。
http://www.epochtimes.jp/jp/2011/02/html/d12196.html?ref=rss&utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
体制維持のためには人殺しを何とも思わない、悪徳国家同士は実に仲がいい!
ちょうど、RFAの記事の中に北朝鮮の食料事情に付いての報告があったのでこれを抄訳して見た。
北の人々が今どれほど飢えに苦しんでいるかを想像してみてほしい。政府の暴挙が人々を死に追いやっている。このままだとその先どれほどの餓死者がでるか分らない状況なのだ。
しかし、ここで中東のように民衆が立ち上がったとしても、悲しいかな、徒に銃弾により倒される者が増えるばかりであろう。
——————————————————————
<北朝鮮:生きるために草を食べる>
2月23日付けRFA英語版
http://www.rfa.org/english/news/korea/food-02232011185323.html
専門家たちは北朝鮮で食料不足と栄養失調の事実を見つけた。
「一部の人々は逼迫した食料難と危険域に達した栄養失調の下、必死で草やハーブまで食べている」と今月、この閉ざされた国の中で食料調査を行った援助団体が明らかにした。
北朝鮮政府は夏の天候不順と冬の厳冬により食料不足に見舞われているとして、5つの団体に現状アセスメントを依頼した。
これを受け、2月8~15日にかけ7人の専門家が、平壌の北と南及び慈江道で調査を行った。
その結果「調査団は栄養失調と食料不足の事実を確認した。人々は野草やハーブを必死に探している」と共同報告書に記載された。5団体とは以下Christian Friends of Korea, Global Resource Services, Mercy Corps, Samaritan’s Purse, and World Vision.
「この傾向は政府の公共食料配給システムに依存する家庭に顕著であり、特に子ども、年寄り、慢性疾患者、妊婦、幼児を抱える母親が危機に瀕している」という。
「地域の病院ではこの6ヶ月、栄養失調のケース、未熟児、授乳不能、回復不全のケースが増加している」、「現在の食料供給が減少すれば、これらの健康問題は必ず増加する」と報告要旨に記されているとMercy CorpsがRFAに伝えた。
チームは北朝鮮に対し、子ども、妊婦、授乳母その他の弱者を対象とした食料援助が実施されるべきだと勧告している。
穀物打撃
この2ヶ月間の厳寒により春の収穫を待つ小麦、大麦およびジャガイモの50~80%が打撃を受けたと当局は見積る。
その上世界的食料価格の上昇により不足分を輸入することが益々難しくなって来ているという。
調査に当たった5団体は何れも10年以上前からこの北朝鮮を調査し続けている。2008年には、この5団体の調査結果に基づきアメリカは慈江道と北平壌地区の90万人を対象に7万1千トンの食料援助を実施した。
韓国襲撃
北朝鮮政府は最近、大使館や出先機関を通じ各国に食料援助を要請した。しかし、各国は去年北朝鮮がアメリカの同盟国韓国に対し行った2度に渡る軍事攻撃を理由に援助を躊躇している。
平壌はさらに最近、核兵器に使用可能な核分裂性物質を作り出す新しいシステムの開発に成功したと宣伝した。6各国協議もこの2年間暗礁に乗り上げたままだ。
アメリカと他の西洋諸国はこの腐敗した国家に対し食料援助すべきかどうかのジレンマに陥っている。
専門家の中には「援助された食料は通常軍隊を通じエリートへのギフトになったり、利益を得るために市場で売りさばかれる」という者もいる。
北朝鮮への食料援助の大部分を担っている国連の世界食料計画によれば、現在の食料供給は後1ヶ月で底をつくという。
政府は今年海外から32万5千トンの食料を買い付ける計画であったが、食料価格の高騰により20万トンしか購入できないであろうと5団体はいう。
6月に食料は尽きる
2010年度の総農業生産量は512万トンと報告されている。これは2400万人の人口に対し最低必要とされる793万トンに到底及ばない数字だ。
北朝鮮当局は6月中旬に食料備蓄が尽きるであろうという。
報告書によれば、政府配給分は大人1人当たり平均360~400グラム/日に引き下げられたが、これは約1250カロリーに相当するという。
「春の収穫が減少すれば、この厳しいレベルの配給も維持できなくなるであろう」と報告された。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)