チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年2月24日

チベットの「冬期厳打キャンペーン」/携帯に「抵抗歌」20人以上拘束

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中国当局から「抵抗歌」とされるシェルテンの歌「和合の調べ/The Sound of Unity /མཐུན་སྒྲིལ་རང་སྒྲ་」(英語サブタイトル付き)

後記:この歌の日本語訳が最後にあり!

同じ歌を4人の人気歌手が歌ったバージョン:
http://www.youtube.com/user/MONJYULEMON?feature=mhum

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2月23日付けRFAチベット語版より。
http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/lhasa-02232011215142.html

今、ラサでは携帯電話の中に反中的チベットソングをダウンロードしていないかがチェックされている。

チベットでは「冬期厳打キャンペーン」と名付けられた運動が始められて後、弾圧が強まっている。特にラサにおいては携帯電話の中にチベットの歌がダウンロードされていないかが検査され、1月中だけでも20人以上の若者が拘束されたり、罰金を課せられたりしている。

この「冬期厳打キャンペーン」に関する資料をRFAはラサから入手した。それによれば、このキャンペーンは中国の春節、チベットのロサ(正月)及び「チベット平和解放60周年」が平和的環境の下に滞りなく行われる事を目的として行われると記されている。

拘束されたり罰金を課せられた20人以上の若者は当局が中国政府に対する「抵抗歌」と認定する歌を携帯にダウンロードしていたからだという。「抵抗歌」とされる歌の中には「和合の調べ/མཐུན་སྒྲིལ་རང་སྒྲ་」、「私のラマ:太陽、月、星を思いだす/ངའི་བླ་མ་ ཉི་ཟླ་སྐར་གསུམ་དྲན་བྱུང་(歌シェルテン)」等が含まれるという。

もっともこれらの歌が禁止されるのはこれが初めてではない。しかし、またチベット以外の中国本土ではこれらの歌は禁止されていない。当局によればこれらの「抵抗歌」を携帯にダウンロードしてはならないというのは保安法47条によるものだという。

ラサ在住のチベット人の話によれば、「当局が禁止している歌の意味はチベット人はみんな仲良くすべきだと言っているだけで、政府を批判するような意味はどこにもない。それなのに当局は禁止しているのだ」という。

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もう一つの当局指定の「抵抗歌」
「私のラマ:太陽、月、星を思いだす(と思われる)/ངའི་བླ་མ་ ཉི་ཟླ་སྐར་གསུམ་དྲན་བྱུང་(歌シェルテン)」

後記:歌詞の日本語訳が下にあり!

チベット人にとっては太陽=ダライ・ラマ法王、月=パンチェン・ラマ、星=カルマパである。歌ではこの3人の師がチベットから消え、人々は無明に覆われてしまったことを嘆き。苦しみを見守って下さいと祈る。

なお、これらの歌を歌う人気歌手シェルテンが逮捕されたという話はまだ聞かない。

RFAの電話討論の場において、この問題について長い討論が行われている。チベット語が理解できる人は以下も聞いてみてほしい。
http://www.rfa.org/tibetan/tamlenggiletsen/tamlengzhalpar/china-van-tibetan-songs-and-arrested-many-tibetans-02232011161101.html

この討論にはチャンゲンヨンという中国の弁護士も加わっている。
彼によれば、「それぞれの民族を讃えるという歌は漢民族の中にも他の少数民族の中にも沢山ある。これらが禁止されるということはまことにおかしなことであり、憲法でも、各自治州の法律でも、それぞれの民族が固有の文化を守るために歌を歌うことが禁止されているなどということは決してない」と言明している。

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「UNITY」 一つになろう
☆、。・:*:
歌詞: Taglha Gye 音楽: Dubey 歌手: Sherten 翻訳:Sherten日本語翻訳チーム

(若者たち
アムド、カム、ウーツァンの人たちはみんな家族です!運命を一緒に歩みます!

(子供たち
蓮の花のように調和して、皆で一緒に花開きます!

(学生たち
手と手をつないで、さあ調和して前進です!

(各地域の人たち
私たちの国籍の未来を心配するなら、3つの地域が一つとなることが必要です。

(青年たち
アムド、カム、ウーツァンの人たちはみんな家族です!運命を一緒に歩みます!

(子供たち
雪の国チベット人たちは一つになります!

(役者たち
アムド、カム、ウーツァンの人たちはみんな家族です!運命を一緒に歩みます!
手と手をつないで、さあ調和して前進で~す!

前奏

(シェルテンから
私たちの国籍の幸福と未来を心配するなら、
アムド、カム、ウーツァンの人たちはすべてひとつです!

☆、。・:*:

お~い!チベット人たち! 一つになろう 一つになろう
あなたの父の顔にうかんだ悲しみを思うなら

お~い!チベット人たち!一つになろう 一つになろう
あなたの母が心の中で流した涙を思うなら

お~い!チベット人たち!一つになろう 一つになろう
雪の国チベット人は一つになろう

私たちは父母を同じくするきょうだい、民族の跡継ぎ 赤い顔のチベット人だ!

☆、。・:*:

お~い!チベット人たち! 一つになろう 一つになろう
苦楽の混じった年月を思うなら

お~い!チベット人たち! 一つになろう 一つになろう
チベットの上域、中域、下域の人たちも一つになろう

お~い!チベット人たち! 一つになろう 一つになろう
雪山の前途を思うなら

お~い!チベット人たち!一つになろう 一つになろう
老いも若きも一つになろう

私たちは上域地方の牧場主、下域谷の畑の主 赤い顔のチベット人だ!

☆、。・:*:

お~い!チベット人たち! 一つになろう 一つになろう
涙あり笑いありの運命を思うなら

お~い!チベット人たち!一つになろう 一つになろう
三地域の人たちも一つになろう

お~い!チベット人たち!一つになろう 一つになろう
自由な生活の平和と幸せを思うなら

お~い!チベット人たち!一つになろう 一つになろう
若者、娘たちも一つになろう

私たちは新時代の使者、雪山の未来の主 赤い顔のチベット人だ!

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☆、。・:*:「太陽よ!月よ!星よ!」☆、。・:*:
ニンダカルスムཉི་ཟླ་་སྐར་གསུམ། 歌:sherten

金色に輝く太陽は、別の地の上に昇った
ほら貝のように白い月は、黒雲に覆われた
心の闇を明るくする大きな星が、聖地の山上に現れたが
ほら貝のように白い月は、黒雲に覆われた

太陽よ!月よ!星よ!

有雪国チベットを無明の闇が覆ってしまった
身の無明のせいで、あれこれ正しくないことを行い
口の無明のせいで、でたらめな追従を言い
意の無明のせいで、自分がどの民族かも忘れている

これより悲しい運命がどこにあろう

太陽よ!月よ!星よ!

これより悲しい運命がどこにあろう

中空に太陽と月が昇ったとき
心の闇を明るくする、太陽と月と星を想う
悲しい心でこの歌を口ずさんだ
守護者よ! 慈悲をもって有雪国の苦痛を見てください

太陽よ!月よ!星よ!

守護者! 慈悲をもって有雪国の苦痛を見てください

太陽よ!月よ!星よ!

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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