チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年2月23日
ダライ・ラマ法王ムンバイで、エジプトとチェニジアの平和的抗議活動を称賛される
2月19日付けphayul.com http://p.tl/q4k2
(写真は2枚ともOHHDL/Tenzin Chojor撮影)
ダライ・ラマ法王は中国が変わる事により、チベット問題が解決されることを期待すると述べられた。法王は先週金曜日ムンバイ大学にて学生と職員を前に「古来の智慧と近代的思考」という題で講演を行なわれた。「中国では一党独裁による全体主義体制が続いている。しかし、この30年間を眺めれば、変化した面も多い。今も、変化の兆しが認められる。世界は変化している」と76歳になるチベット人のリーダーは語られた。
最近TIMES紙により「人類史上もっとも有名な政治的アイコン:25人」の中に選ばれた1989年度ノーベル平和賞受賞者は「近代的大学は、学生に全体的視点を持つよう教育すべきだ」とし、さらに「暴力は如何なる問題に対しても建設的手段とはなり得ない。常にアヒンサ(非暴力)の原則を堅持すべきだ」と勧告された。
「暴力は予測不可能な結果を生み、また非現実的手段だ。アメリカの前大統領ジョージ・ブッシュは・・・彼は非常にいい人で私は好きなのだが、彼のイラクとアフガニスタンに対する戦争政策は良くなかった。民主化を進めるのは常に良いことだが、その手段が良くなかった」と法王。
この後、同じ日タージマハール・ホテルで法王は神経外科医が集う会議にも参加された。
法王は「最近のエジプトとチェニジアにおける民衆蜂起は、インド建国の父であるマハトマ・ガンジーのイギリスに対する非暴力闘争の伝統に従うものだ」と語られた。
さらに「ガンジーにより掲げられたこの信条はアメリカの市民権運動を率いたマーチン・ルーサー・キングとアパルトヘイトに反対した南アフリカのネルソン・マンディラに影響を与えた」と述べられた。
さらに「嘗て、フィリピンからチリまで平和的市民運動が多くの変化をもたらせた。今、同じようなことがエジプトやチェニジアで起こった。デモを行う人々が一度も発砲することなしに達成された。このように、世の中は変化している。彼らは非暴力主義に従っている」
「非暴力主義を弱さの印と見なしてはならない。それはむしろ強さの印なのだ」とチベットのリーダーは語られ。「20世紀は血に塗られた世紀だった。原子爆弾を含む、常軌を逸した暴力が行使された。この結果、確かに某かの平和がもたらされたかもしれない。しかし、21世紀は対話の世紀でなければならない。さらに、もっと平和な社会を生み出すために」と結ばれた。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)