チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年2月18日

チベット人歌手ヤンチェン・ラモ、グラミー賞獲得

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ヤンチェン・ラモチベット人の中にはヤンチェン・ラモという名の人は沢山いる。また、ヤンチェン・ラモという名前の意味は「メロディーを持つ女神」であり、またインドの音楽の神様「サラスヴァティー女神」のチベット名でもある。だからこの名前を持つ女性が歌手になるというのは、名前に誘発され?よくあることなのだ。実際この名前を持つチベット人歌手は多い。どのヤンチェン・ラモなのかということを調べていくと、最後にはとても香ばしい話に行き着いたのであった。

まずは、内輪(ツイッター上)で進んだ、この話のプロセスを紹介する。

今年のグラミー賞選考会はロサンゼルスで2月13日に行われた。
14日のVOTは「チベット人歌手ヤンチェン・ラモがritual song部門で受賞」と伝えた。これを聞いて私は早速ツイッター上にこのニュースを知らせた。多くのチベットファンがこれを喜ぶ反応を示してくれた。

で、私はヤンチェン・ラモをググったとき見つけた以下のサイトを張りhttp://www.fooooo.com/watch.php?id=WsxRwYdrR5A

この映像の下の方に書いてある「Yungchen Lhamo, Grammy Winner, is interviewed…」を見て、てっきり受賞したのは嘗てダラムサラにいて今はアメリカに移住し活躍している、ヤンチェン・ラモさんが受賞したのだと思った。彼女は坂本龍一氏に曲を書いてもらったり、「セブンイヤーズインチベット」のサントラにも加わり、数々のフリーチベットコンサートにも呼ばれている。

このニュースに色めきだったかねてからのチベットの歌ファンの中には早速チベット本土で人気の高い、美人歌手のヤンチェン・ラモの映像をツイに流した人もおられた。以下そのヤンチェンさんの歌をいくつか紹介する。
http://www.youtube.com/watch?v=8pEFeouscKI&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=Ux6jfJWYBcA

で、その後、ある人が「調べたけど、今年の受賞者リストに載ってない。トンバニさんのガサネタでは?」という恐ろしいツイも出現した!
これは、一大事と私の方で、ネットで探るも、はっきりせず、phyul、RFA、VOTに聞くも、実は彼らもよく分かっていないということが判明。大方はきっと自分たちの知ってるダラムサラにいたヤンチェンであろうという意見。

後で、よく調べると最初この人と思ったヤンチェンさんのインタビューが行われたのは2008年7月30日ということが判明。グラミー賞を受賞したとしても彼女は今年じゃないだろうということになった。

そうこうするうち、最初に疑問を呈した、中国語に強い@uralungtaさん(以下:うら)と@osadayukiyasuさんが本物の受賞者らしきヤンチェン・ラモさんを発見!
http://news.xinmin.cn/rollnews/2011/02/15/9308583.html
http://news.163.com/11/0215/11/6SU8OEF900014JB6.html

彼女のブログには前国連事務総長コフィ・アナン氏と一緒の写真が沢山掲載されている。ちょっと、有名人趣味あり。

歌は
http://www.youtube.com/watch?v=pjf2aGI7GoE&feature=player_embedded#at=25
等。アムド出身らしく髪を三つ編みにし、チベット人の香りは一杯。

うらの調査によると、彼女台湾人政治家の息子と結婚し、日本の和太鼓グループとも度々共演、
http://www.youtube.com/watch?v=IumYGbqiDAw
今度のグラミー賞も実は日本の(無名に等しい)琴奏者松山夕貴子との共演だった。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20110216/1034519/?SS=expand-life&FD=-1690707999
日本語記事:
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2011/02/14/kiji/K20110214000244340.html

と、ここまでなら「やっぱりチベット人が受賞してたんだね、良かったね」で終わるところなのだが、ここから先に少々香ばしい話が待っていた。

彼女が今回受賞した歌は「Journey to the Mountain」というアルバム中の仏教のお経を歌にした「Words of wish fulfullment満願文」という曲。これはMihoレーベルから発売されている。
http://www.amazon.com/gp/product/images/B0043SQIAQ/ref=dp_image_z_0?ie=UTF8&n=5174&s=music

このMihoレーベルというレコード会社は、かの新興宗教団体神慈秀明会傘下の会社。この世界救世教秀明教会というのはご存知の方も多いかもしれないが、世界救世教から1970年に独立した神道系の新興宗教団体である。
http://www.geocities.co.jp/technopolis/9575/gaiyou.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/神慈秀明会

上の資料を読んでも分るが、かなりヤバイ団体である。フランス議会からはカルト指定されている。ちなみに「フランス議会がカルト指定している、日本の宗教団体には神慈秀明会の他、統一協会、エホバの証人、幸福の科学、創価学会、霊友会、崇教真光等の名称が上げられている」という。

信者からの上がりは相当な額に昇るらしく、有名建築家に設計させた大きな美術館などを持っている。台湾はじめ、世界各国に布教しているらしい。

この会の傘下には、ヤンチェンさんがしばしば共演している、「秀明太鼓」という日本太鼓のグループがあるが、このグループも実は2008年にグラミー賞を受賞しているのだ。
http://lilyflora.exblog.jp/8028859/
この年にもノミネートされていた、喜太郎を退けての受賞!
何か在りそうと調べていくと、夕刊フジに以下のような記事が出ているということをうらが教えてくれた。
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/110215/ent11021522110013-n1.htm

グラミー賞もスポンサーが激減しているというので、強力な金の入るスポンサーを募集しているようなのだ。こうなると、無名に等しい太鼓のブループや今回の琴奏者+ヤンチェンさんが受賞したことも納得がいくような気がしてくる。「オトナの事情」というやつか?

このヤンチェン・ラモさんはアメリカに移住し、去年2月には「中国海外チベット族協会」を設立して会長(主席)に収まっているという。

イメージとしては政治家や新興宗教、中国政府の力まで借りて(利用して)どんどんのし上がってきたアムドのやり手女性歌手と言ったところか?
ま、いろんなチベット人がいるわけだ。

それでも、VOTなどでは「内地で活躍し、仏教的歌を歌うチベット人女性歌手がグラミー賞を受賞した」と素直に喜んでいる風に報道されている。

最後にヤンチェン・ラモ「私の故郷」
http://www.youtube.com/watch?v=Aipqgvsx940&feature=related

追記:@10Qwakaさんより/ヤンチェンさんの所属レーベルは台湾の宗教音楽大手WIND MUSIC(風潮音樂)http://t.co/S9A9G6d
ここはカルマパのCDもhttp://t.co/9C87u3Wレーベル発の動画http://t.co/rBqUXp7

———————————————————————

追記:ぐち/
最近youtubeを貼付けることができなくなっている、というか、youtubeを貼るとURLをクリックして飛ぶことができなくなる。両立しない。
また、URLをクリックしても別画面が現れず、見てる画面が変わってしまう。もっともこれはひょっとしてプラウザにもよるかもしれないが。
今、Livedoorさんに問い合わせ中。ご迷惑かけてすみません!
近く、改善されるはず。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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