チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年2月5日
チベット地域のロサ(正月)を統一しよう運動
写真は去年チェンツァで行われた「民族平等・言語自由」を訴えるデモ。(C/R RFA)
以下、2月3日付けTIBET TIMESチベット語版より:
http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=3992
アムドの青海湖方面(黄南チベット族自治州)チェンツァ・ゾン(གཅན་ཚ་རྫོང་尖扎県)にあるチベットの町や村の多くは、今までのように中国の春節(正月)を祝うことをやめ、今年から他のチベット地域と同じロサ(正月)を祝うことにしたという。
一般に今日(2月3日)はモンゴル暦の1月1日に当たり、アムドやカムの多くの地域、及びウツァンの一部地域における正月である。アジアの多くの国で新年のお祝いをする日となっている。漢民族やモンゴル族の正月でもある。
この日が中国全土の正月となっていることから、近年アムドの一部地域ではこの日を祝う気になれないという雰囲気が生まれている。
今年、地域のチベット人たちの多くはロサをチベット暦に従う日に祝うことに決定した。これを知った地区の役人たちは、この運動を先導している者は誰なのかを捜査し始めている。
この件に関し、インドのブッダガヤ在住チェンツァ出身のサンゲ・ギャンツォ氏が地元に電話し状況を確認したところを報告している。チェンツァのマグルརྨ་མགུར་僧院、デチェンབདེ་ཆེན་僧院、ガロンངང་རོང་僧院、コウワ ཀོའུ་བ་僧院、サンドクགསང་སྒྲོག་僧院等の管轄である8つの町や村、ホルモ ཧོར་མོ་の3つの村、カプックツォསྐ་ཕུག་ཚོ་の3つの村の長老たち全員が率先し、今年から、今まで約80年間続いて来た慣習を変更し中国の新年を祝うことなく、ダライ・ラマ法王はじめ、内外のチベット人やウツァン、カム、アムドで一般に祝われるチベット暦のロサの日に祝いを行うことを決定した。
これは中国と同じ正月を祝う気になれないということと、特にダライ・ラマ初め内外のチベット人と苦楽を共にするという意味が込められているという。
これは、最近益々盛り上がりをみせている、内外チベット人の団結、チベット3地域の団結を象徴するために、祝日も一緒に祝おうというものである。
この事を知って、地方政府の役人や中国人の偉いさんたちは、これらの僧院や長老たちに不機嫌な態度を示し、先導者を捜査しているという。
—————————————————————–
チェンツァでは昨年10月末に当局の中国語強要に反対する学生デモが起きている。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51515834.html
また、2008年10月には中学生ユン・ルンドゥップ君が「チベットには自由も基本的人権もない」と訴え、校舎から飛び降り自殺をするという痛ましい事態も起きている。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2008-10.html
彼は詩を書いていた。死後【拘禁されたチベット人】という遺詩集が出版されている。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51247912.html
その他、ンガバ地方では去年ジェクンドで地震のため、ドゥクチュで土石流のため多くの同胞が亡くなったということで、今年はロサを祝わないという地区も多いという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)