チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年1月27日

デキ・ツェリンのラップ曲「༄༄།།འབོད་གཏམ།། 呼びかけの言葉」

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デキ・ツェリン 「呼びかけ」今日も昨日に引き続きチベット人歌手デキ・ツェリンのラップの曲を紹介する。

今日は私が苦労して翻訳したもの。

歌の題は「འབོད་(呼びかけ)」であったり「འབོད་གཏམ་(呼びかけの言葉)」であったりするが、これは明らかに「བོད་(チベット)」との掛け言葉であると思われる。
実際彼のライブ映像を見ると、彼は「བོད་(チベット)」と書かれた鉢巻きをして歌っている。

この歌により、チベット人にチベット人としてのアイデンティティーを促し、聖なるチベット人の土地を守ろうと訴えている。

ウーセルさんもかつてこの歌を称賛され、歌詞の中国語訳を掲載されている。http://woeser.middle-way.net/2009/05/blog-post.html

残念ながら、どうしたものかこのところこのブログにyoutubeが直接アップできなくなった。
とにかく、まず最初に以下youtubeのURLをクリックして、彼の歌を聞いてほしい。

曲の中ではチベットの伝説の英雄、リン・ケサル王の名が度々叫ばれる。
リン・ケサル(ゲサル)王については例えばウィキペの
http://ja.wikipedia.org/wiki/ケサル王伝
とかを参照してほしい。

最初の方は彼のライブステージで、この方が迫力はある。
http://www.youtube.com/watch?v=nnCYx2fswQQ&feature=related

次は同じ曲のMV版で、チベット語の歌詞とその下に中国語訳が付けられている。
http://www.youtube.com/watch?v=CRXdU1OUqtk&NR=1

以下はチベット語からの参考程度の稚訳に過ぎない。

—————————————————————–
デキ・ツェリン 「呼びかけ」<འབོད་གཏམ།། 呼びかけの言葉>

作詞:カシ・ケルタン
作曲:ツァンギュル
歌:デキ・ツェリン

(金剛薩�券菩薩百字真言)

オーム、吉祥とならんことを
高き雪山に囲まれし聖域
神々の座、高き雪山、蓮華生大師仏伝の地
恩師トンメサンポ創りし文字広がる地
リン・ケサル王降臨の地
ソンツェン・ガンポ王駆け巡りし戦場

高く聳えるチョモランマ
黄金の仏塔の如く悠々高々
長江、黄河青く滔々と流れ
めでたい歌声楽しげに広がる

馬宝羊が自然に現れ
草原の花々のただ中に美し
ケサル王の白馬が馳せ飾る地
ケサル王の金の玉座輝く

この地の由来を知らないというならば
ここは父なる菩薩の最上の地と知れ

デキ・ツェリン 「呼びかけ」純白のツル、ケサル王
翼を我に貸したまえ、ケサル王
遠くへは行きませぬ、ケサル王
リタンを廻って帰って来ます、ケサル王は飛び立った

雪山に囲まれし聖域
この世の高み
遠く離れた寂静の町中で
人々は一喜一憂

仏法は月の満る如し
ラマと僧は夜空の星の如し
六道有情を我が子の如く見守る
菩薩はこの地を喜ぶ、喜ぶ

仏法に背を向ける嘘つきが一部
口で六字真言を唱えしも
心に金のこと思う
悪習に染まるは悲し、悲し

赤い頬したチベット人として
生まれし男女は喜ばし、喜ばし
清き仏法を信じない
そんな世俗の人は悲し、悲し、悲し

デキ・ツェリン 「呼びかけ」COME ON OH FRIEND ARE YOU READY

有能で正しき役人が
地域に福をもたらすは喜ばし、喜ばし

COME ON OH FRIEND ARE YOU READY

無能で悪しき役人が
汚職で民を損なうは悲し、悲し

COME ON OH FRIEND ARE YOU READY
COME ON OH

大学者トンミサンボータが生まれ
チベット語を創作したは喜ばし、喜ばし
口でチベット人と言いしも
母語を知らぬは悲し、悲し

大学にまで進む
多くの若者がいるは喜ばし、喜ばし
作家や知識人となる者
されど少なしは悲し、悲し

リン・ケサル王の如く
知恵と勇気を供えるは喜ばし、喜ばし
チベット人であることを忘れ
兄弟が争うは悲し、悲し

古よりの習わしを忘れず
チベットの服を着るは喜ばし、喜ばし
環境を守る意識乏しく
獣の毛皮を羽織るは悲し、悲し

金等の宝が眠る
山河渓谷は喜ばし、喜ばし
目先の利己的利益に走り
破壊されし風景は悲し、悲し

先祖代々の霊漂う地
馬、宝、羊が豊かなるは喜ばし、喜ばし
悪しき心の屠殺者に
売り渡されるは悲し、悲し

デキ・ツェリン 「呼びかけ」インドの東のクジャク、ケサル王
コンボ地方のオオム、ケサル王
異なる地から来るが、ケサル王
集まる場所は法域のラサ、ケサル王は飛び立った

オー ラッソー!!!

雪山の子どもたちは
長き歴史の転換点にて
頭の隅の鼻で嗅ぎ
小さな目は遠くを観る

宝の如し人の身と有暇を得
無駄に人生を過ごし
父の地を息子が守らねば
白法の父の地は失われよう

良き息子よ目を見開き眠るなかれ
財宝は草の端の露の如し
命は風に晒される灯明の如し
知識こそ如意宝珠

年を重ねた白髪の白き心と
白い歯で三つの言葉を話せる若者と
白い心の科学を学ぶ子どもたち
この三つが集まった歌声により

デキ・ツェリン 「呼びかけ」吉祥祈願を繰り返す
吉祥祈願を繰り返す

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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