チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年1月10日
ウーセル:2009年3月、重慶で解放軍の哨兵が殺される事件があった。
ウーセルさんはブログ以外に、ツイッター上でも精力的にチベット関連のニュースやエッセイを発表されている。
以下は昨日のツイッターにウーセルさんが書かれたものである。
中国語からの翻訳はいつもの雲南太郎さん(@yuntaitai)。
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2009年3月、重慶で解放軍の哨兵が殺される事件があった。
官製メディアからネット民まで、市政府から公安局と兵営まで、薄熙来書記から事件処理の警官まで、誰もが言外に銃撃犯と「チベット独立主義者」を一緒くたにしていた。ある目撃者はテレビで、銃撃犯は「色黒」だと証言した。
ネット上である人は「銃撃事件はもう反テロ作戦の範疇に入ってるから、今後は『チベット独立』『ウイグル独立』をやっつけるのは道理にかなう」と鋭く言った。
逮捕されてもいないのに、もうチベット人と決め付けるのか!?「大胆にも哨兵を殺害した『チベット独立主義者』を我が強大な人民独裁機関は逮捕した」。中央電視台か新華社ネットで、当局の凛々しい役者がおごそかにと宣言する日を私たちは待ち続けた。全国の人民に映像付きで「色黒」の犯罪者を見せてくれるだろう。
だが、しかし、ところが、意外にも期待は外れた。ずいぶん時間がたち、あの「色黒」の「チベット独立主義者」はまだ捕まっていない。それだけでなく、我が人民の独裁機関が事件解決にかける情熱は時間とともに消え去ったようだ。燃え盛った怒りは水をかけられたように消えた。おかしなことだ。
いやいや、これは失礼だ。生きているチベット人にも死んだ哨兵にも申し訳ない。重慶の黒社会追放運動が激しい以上、哨兵を襲ったテロリストは必ず罰せられるのだろうか?銃撃者が「チベット独立主義者」なのか、少なくとも公に説明しなければならない。まさか「色黒」イコール「チベット独立主義者」なのだろうか?「色黒」は黒社会なのだろうか?
覚えているだろうか? 2008年7月に雲南省昆明でバスの爆発事件が起き、誰が犯人か結論は出なかった。ある日本の大手メディアの記者によると、中国高官ははっきり「チベット族がやった」と彼に話したという。こんな重要な結論の唯一の証拠はなんと、雲南にはチベット族がいて、雲南のデチェン州はチベット族自治州だからだという。
半年後、昆明のカフェで爆発事件があり、バス事件はついに「解決」した!当局は「二つの爆発事件は李彦がやった」と宣言した。彼はどこの人?「雲南省宣威の無職の男だ」。中国メディアは「これは社会に向けた暴力報復行為。警察の調べでは、李彦は社会に不満があり、世の中が嫌になっていた」と報じた。
最初から最後まで、中国メディアは「テロリスト」の「テロ行為」とは一言も言わなかった。中国で「テロリスト」というレッテルには専売特許があり、この権利は「色黒」のチベット人やほかの少数民族に属しているかのようだ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)