チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年12月22日
デブン僧院の受難・高僧に無期懲役
<いかなる政治的活動記録もないデブン僧院の指導的学僧に無期等の長期刑>
今回紹介するレポートの一部はすでに以下の過去ブログで報告済みであるが、
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51510375.html
昨日ICT(International Campaign for Tibet)が詳しい関係レポートを発表しhttp://www.savetibet.org/media-center/ict-news-reports/senior-drepung-monk-scholars-“-no-political-record”-sentenced-life-long-sentences-crackdow
これを受けAP(北京)も記事を書いているので
http://asiancorrespondent.com/44168/rights-group-concerned-over-fate-of-tibetan-monks/
主にICTのレポートを使い再び報告する。
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2008年3月、ラサで始まった、中国政府の政策に抗議するチベット人の蜂起活動は一気にチベット全土に広がった。
3月10日、この一斉蜂起の口火を切ったのはデブン僧院の数百人の僧侶たちであった。
この時にも多くの僧侶が逮捕されたが、当局は4月中に何度もデブン、セラ、ガンデンのラサ三大僧院を襲い、多くの僧侶を拘束した。
デブン僧院からだけでも約600名の僧侶が拘束されたという。
その多くはその後ラサから遠く離れた青海省のゴルムドに列車で送られ、軍刑務所に収監された。
当局は後に「彼らは教育のために」送られたのだとコメントした。
4月11日、デブン僧院から多くの高僧たちが引きずり出され、連れて行かれた。
彼らはデモに参加しておらず、政治的活動に直接関わっていた人たちではなかった。
その中、デブン・ロセリン学堂འབྲས་སྤུངས་བློ་གསལ་གླིང་དགོན་པの戒律師དགེ་སྐོས་であったジャンペル・ワンチュック師འཇམ་དཔལ་དབང་ཕྱུག་(55)には今年の6月、無期懲役の判決が下された。
同じ日、ゴマン学堂འབྲས་སྤུངས་སྒོ་མང་གྲྭ་ཚང་の教師དཔེ་ཁྲིད་དགེ་རྒན་クンチョック・ニマ師དཀོན་མཆོག་ཉི་མ་(43)に懲役20年、
ガクパ学堂སྔགས་པ་གྲྭ་ཚང་の教師ガワン・チュニ師ངག་དབང་ཆོས་ཉིད་(38)には懲役15年が言い渡された。
彼らはデブン僧院内だけでなく、ラサのチベット人たちからも尊敬を集める有名な学僧たちであったという。
彼らの消息は途絶えたままであり、ラサの市民たちは彼らの安否について心配している。
あるラサの人は「当局はこのデモを利用して政治的ではない有力なデブンの僧侶たちを逮捕し、デブン僧院の力をそぐつもりなのだ。3人が今どうされているのかが非常に気がかりだ」と話す。
その日、同時に逮捕されたガワン・チョンキ、ガワン・セルト及びギャッパ(でぶっちょ)と渾名されていた料理人の行方も以後不明のまま。
また、僧ギャルポは2009年8月監獄での拷問により死亡したとTCHRDが報告している。
僧ロプサン・ワンチュックは拷問の末ほぼ視力を失った。
亡命政府の発表によればデブン僧院からだけでもその他42人の僧侶に様々な刑期が言い渡されたという。
このICTのレポートでは、その他2008年以降に無期懲役を求刑されたチベット人3人をリストアップしている。
1、ラサで活動していたHIV/AIDS問題を扱うthe Australian Burnet Instituteで働いていたワンドゥは「スパイ罪」で無期懲役。
詳しくは(以下同様)>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51142553.html
2、ドルジェ・タシ、彼は有名な資産家、事業家であり、共産党員でもあった。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51492769.html
3、チャムドの爆破事件に関連し、ギュメ僧院の僧ドゥンドゥップと僧ケルサン・ツェリン。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51112492.html
その他、2008年以前において、カムの高僧テンジン・デレック・リンポチェが最初死刑、後に無期懲役に減刑されている。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51305374.html
2001年には僧チュイン・ケドゥップが独立要求のパンフレットを印刷、配布したとして「国家分裂先導罪」で無期懲役になっている。
写真はICTより、1枚目ジャンペル・ワンチュック師、2枚目クンチョック・ニマ師、3枚目ガワン・チュニ師。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)