チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年11月30日
法王のダラムサラ・ティーチングが始まる/ガンデン・ガムチュ(ジェ・リンポチェの命日)
当地ダラムサラのツクラカンでは、今日(11月30日)から3日間、ロシアグループのリクエストに答えダライ・ラマ法王が仏教講義と灌頂を行われる。
phayul.comによれば参加者は1万人を越えるそうだ。
その内ロシア人が1035人、その他54カ国から4000人以上の外人が参加しているとのこと。
目立つのはロシアに続いて、台湾、韓国、欧米人。
日本人は10数人というところか!
今回はマリア様の通訳がないという事もあるかもしれないが、いつもながら日本人の少なさは異常なほど。
ソビエト時代に弾圧されていたロシアのチベット仏教徒はこのところ見事な復活振りを示している。
その中心はもちろんかつてチベット仏教が栄えていたブリヤート、カルミック、トゥバの3共和国。
その他のロシア人参加者も年々増えているという。
モンゴルからも大勢来ている。
とにかく、モンゴル人種とロシア人種が混じったような、実に様々な顔が並んでおり、その多様さを観察するのが面白い。
モンゴル系は色白で丸顔、朝青龍のように太った人が多い。
ロシア系ももちろん真っ白で、中にはロシア美人風な若いのもいるが、だいたいは丸々と太った年寄りが多い。
今回のティーチングにはカルミック共和国の前首相とロシア議会の議員3人、それにカザフスタンの経済大臣が要人参加しているという。
さらに、今回はロシア各地から27ものメディアが取材のためにこのダラムサラまで来ているとの事。
ま、何から何まで、日本とは桁違いだ。
で、ティーチングの方は、法王、朝方1時間ほど、いつものように仏教と他の宗教の違い、チベット仏教の特徴などについて話された。
次に、今回の目玉である「サンワドゥパ(གསང་བ་༷༷འདུས་བ་グヒヤサマージャ/秘密集会)の灌頂への導入部とも言える、ギェセー・トンメ・サンポ(རྒྱལ་སྲས་ཐོགས་མེད་བཟང་པོ་12C、カダム派)の「37菩提行(ラクレン・ソドゥンマ ལག་ལེན་སོ་བདུན་མ་)のテキストに入られ、昼休みを挟み2時間ほどでこれを終了。
その後は明日の灌頂の準備のために俗人に5戒を授けられ、無上ヨガの説明をされた。
「明日の朝方の夢を覚えておくように」と皆にクシャ草が配られ、午後3時過ぎに解散。
通訳の時間を取らない(同時通訳)ティーチングだったので、いつもの法王得意の素早いお仕事振りが堪能できた。
数人に頼まれるまま、私もへたな同時通訳をやっていたが、タントラに入った頃素人さんには解らない内容だし、、、自分も付いて行けなくなり通訳を中断した。
カメラを下ろすと「タシデレ!トポ・ニンバ(Old Friend)」と声を掛けて下さった。
さらに今日はチベット暦の10月25日で、ガンデン・ガムチュ(དགའ་ལྡན་ལྔ་ཆོས་)というジェ・リンポチェ(ツォンカパ)の命日にあたる。
家の下の部屋に、このティーチングを受けるためにドルマ・リン尼僧院から来て泊まっている3人の尼僧たちは、部屋にローソクを立て、この命日の祈りを始めた。
今夜は満天の星空の下、町中に灯明が灯され、とても美しい。
また、この日には必ず丸い小さな団子が入ったトゥクパ(と呼ばれるがむしろ丸いテントゥック)を食べないといけないという。
夕食はもちろんそのトゥクパであった。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)