チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2010年11月3日

チベット語、大海にいりてまた帰らざる/アムドの学生たちへの連帯を示すITSNのアクションプラン

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アムド、チャプチャの学生デモ中国語メディア教育を幼稚園から強要することで、チベット文化の基である、チベット語をさらに無に近づけようというアムドの新教育政策。

これに抗議し、「民族平等!言語自由!」を共通のスローガンとし立ち上がった子供たちの一斉デモは、当局の圧力の下に一旦終息に向かったかに見える。
しかし、チベット語使用の問題は、自分たちの大事なアイデンティティーの問題と強く認識した子供たちの戦いは、これからも長く続くと思われる。

青海省で長く日本語教師をしておられる阿部治平さんはこの抗議デモが始まる前からこの問題に気付かれ、自身のブログ上で詳しく調査、分析されている。

以下はその初めの部分だが、続きも必ず読んで頂きたい。

<2010.10.23 チベット語、大海にいりてまた帰らざる

http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-1353.html
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-1357.html

―― チベット高原の一隅にて(95)――

阿部治平(中国青海省在住、日本語教師)

国慶節の休み、田舎に出かけた学生が「どうもこれからは小中学校ではチベット語を使う授業は全部なくなるらしい」といった。私はびっくりした。去年、黄南蔵族自治州の教育局長が「民族中学ではこれからは絶対チベット語で教える。そのほうが学生の負担も小さいし効果も上がる」と語ったばかりである。「だから漢語があまり上手でない先生はこれからどうなるか心配します」と学生。

調べてみると、この夏、青海省の党政府の上級の教育関係の会議でこの趣旨の決議があった(「新華」ネット2010・9・23)。これは「国家の中長期教育計画(2010~2020)」の青海版である(以下、決議という)。

続く。

—————————————————————-

アムドの学生デモITSNはこの学生デモに連帯を示し、関係当局へのアクションを要請する以下の文章を発表している。

協力をお願いする。
(翻訳:若松えり)

<チベットで前代未聞の学生による抗議行動が勃発>

10月19日、チベット東北部アムドのレブコン (རེབ་གོང་ Rebkong、中国名:同仁) でチベット人学生による6000人以上が参加した、大規模な抗議行動が起こりました。
その後も、 レブコンから約150㌔離れたチャブチャ(ཆབ་ཆ་ Chabcha、中国名:海南チベット族自治州共和県)で2000人が「我々はチベット語を使う自由を取り戻したい」とコールしながら行進しました。

抗議のきっかけは、中国政府の教育指導改革の新しい規制として、チベット語?以外の全教科を中国語で指導し、教科書も中国語で書かれたものに切り替えるという発表に対して、学生らが自分たちの言葉を守ろうと立ち上がり、抗議行動に発展したものです。

この抗議行動は近隣の街にも広がり、少なくとも3カ所での大規模な抗議行動が報告されています。遠く離れた北京民族大学の学生400名もキャンパスで、一連の「チベット語を守ろう」とする抗議行動に支援する形のデモを行いました。

外国人報道記者の立ち入りが禁止されているチベットでは、一連の抗議行動に関する報道のほとんどはRADIO FREE ASIAと現地から、情報規制の目をぬって国外に伝えられた情報をもとに、随時更新されています。

10月25日;AP通信では治安部隊の投入により緊迫した現地の様子が伝えられました。http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5guUjJZX2KRru-qKk3fMokd13c_zA?docId=255197ff9b2548389415c4b82a5cca29

チャブチャで20人の学生たちが逮捕されたとの報告もあり、抗議に参加した学生たちの今後が心配です。

そのためにも、国際社会の目が情報統制下にあるチベットの動きを監視しているのだと、中国政府に伝え、彼等の安全の確保と、意志の尊重を呼びかけてください。

青海省党強衛書記は、6000人以上の学生が抗議行動に参加することになったレブコン (Rebkong、中国名:同仁) に抗議勃発の直前に訪問しており、チベットの教育改革が即時施行されるべきだと語りました。

青海省庁が2010年6月21日 に発表した教育政策に関する公式資料はこちらでご覧頂けます。

この通知の中で『遊牧民と農民のエリアに “ バイリンガル” 幼児教育施設の建設を強力に推進し、義務教育における中国語教育を徹底する。』とし、チベットにおける中国語教育を徹底させる要請を通達しています。

各学校に通達した教育指導計画の調整を促す通知
青海省人民政府办公厅文件  126号:原文(中国語)http://www.qh.gov.cn/html/284/150440.html

このチベット語を廃絶しようとするかのような政策は、チベット語とその文化の存続に関わる問題だけでなく、中国憲法第1章
総則、第4条で保証されている権利に対する明確な違憲行為です。

中国憲法第1章
総則、第4条 :いずれの民族も、自己の言語・文字を使用し、発展させる自由を有し、自己の風俗習慣を保持し、又は改革する自由を有する。

この中国政府による教育指導改革は、多くのチベット自治州内の小学校を含む教育機関で、すでに施行されており、多くのチベット人は、現在の政策がこのまま継続すれば、母国語であるチベット語が消滅の危機に陥る不安を抱えています。
中学以降の授業は全て中国語で行われ、大学の入試試験も中国語なため、中国人クラスメートに比べて、はるかに不利な条件のした、チベット人社会で貧困を生み出す原因の一つになっています。

フリーチベットから19日抗議勃発後から日を追ったレポート:
http://www.freetibet.org/newsmedia/students-protest-language-rights

10月11日から16日、青海省小中学校の教師約、300人を対象に開かれたチベット語教育指導改革研修後、一連の学生による抗議行動直前に、青海省教育委員会に送られた、教師と生徒、約300人による手紙の英語訳は:http://www.freetibet.org/node/2175

同要請書では、チベット語を第一言語とし、指導言語に留める、要請がなされ、遊牧民や農民の多いエリア出身の生徒達は就学前に、中国語を学んだことがないため、中国語で学び、表現することが困難であることが指摘されています。

青海省、強衛書記 と青海省教育庁、王予波庁長、他中国政府関係者へ要請する。

『青海省の使用言語改革』を見なおしてください。

青海省党委書記 強衛書記 The Qinghai Province, Qiang Wei Party Secretary
青海省教育庁、王予波庁長 The Education Department, WANG Yubo Director-General

劉延東国務委員 State Councilor Liu Yandong,

国家民族事務委員会、楊晶主任 (State Ethnic Affairs Commission,The Minister, Yang Jing)
国家民委教育科技司、俸兰司長(The SEAC’s Dept of Education, The Director-General Feng Lan)

袁貴仁 教育部長( the Minister Yuan Guiren)

教育省政策法律局 孫霄兵 局長 the Director-General of the Policy and Regulations Department , Sun Xiaobing)

末尾に、あなたの氏名を入れてコピーして送信してください。送り先は末尾に掲載されています。

Dear Party Secretary Qiang Wei, and Director-General of the Education Department Wang Yubo

I am outraged that China forces Tibetan students to abandon their own language and study exclusively in the Chinese language.

This policy is not only a blatant violation of Article 4 of China’s constitution that guarantees the right for minorities to use their language in education but it also threatens the survival of Tibetan language and culture.

Furthermore, this policy which is already implemented in the Tibet Autonomous Region has resulted in Tibetans being disadvantaged in education and employment. Tibetans struggle to follow classes in Chinese which is not their first language and are at a disadvantage with their Chinese classmates resulting in high drop-out rates and the highest illiteracy rates in China’s regions.

I urge you listen to the Tibetan students and 

- Abandon the proposed reform in the Tibetan Autonomous Prefectures in Qinghai Province
- Ensure that Tibetan language is the primary language of education in Tibetan Autonomous Prefectures
- Guarantee that no reprisals will be taken against students, parents or teachers who protested against the proposed reforms

Yours sincerely

中国政府がチベットの学生に母国語を捨てることを強制し、中国語のみを学ばせようとしている事実に対し、強い遺憾の意を表明します。
この政策は少数民族の言語を守る権利を保証する、中国憲法第1章総則 第4条に対する明らかな違憲行為であるだけでなく、チベット語とその文化の存続を脅かす行為です。
さらに、チベット自治区で、既に施行されているこの政策によって、チベット人は教育や就業の場で不利な条件に置かれています。
チベット人学生は彼等の第一言語ではない、中国語での授業についていくのに中国人クラスメートと比べて苦労しており、結果、落第率と、中国政府統治下で一番の文盲率の高さとなっています。

直ちに、チベット人学生の声を聞き、青海州のチベット自治区に於ける教育改正計画を取りやめ、チベット自治圏内の教育機関では、チベット語を主要言語とすることを保証するとともに、抗議行動に参加した学生、その両親と、教師に何の処罰も与えないことを保証することを要請します。

敬具

青海省、強衛書記 The Qinghai Province, Qiang Wei Party Secretary
青海省教育庁、王予波庁長 The Education Department, WANG Yubo Director-General
住所:No.35 Wusixilu, Xining, Qinghai 810008, China
電話: + 86 971-6310577
ファクス: + 86 971-6310576
ウェブサイト:http://www.qh.gov.cn/
サイトマスターのメール:webmaster@qh.gov.cn



(王予波庁長 は(財)ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)の中国教職員招へいプログラムで、2009 年10 月13 日(火)から10 月26 日(月)までの4 日間、千葉県成田市の教育機関を訪問している。参考:http://www.accu.or.jp/jp/activity/person/data/2009_InviteChina.pdf

劉延東国務委員 Liu Yandong, State Councilor
住所: c/o State Council Information Office. No.225 Changyangmennei Dajie, Dongcheng District, Beijing, 100010.
ウェブサイト: www.scio.gov.cn
電話: + 86 10 8652 1199
ファックス: + 86 10 6559 2364

国家民族事務委員会、楊晶主任(State Ethnic Affairs Commission,The Minister, Yang Jing)
国家民委教育科技司、俸兰司長(The SEAC’s Dept of Education, The Director-General Feng Lan)
住所: No.252 Taipingqiao Dajie, Xicheng District, Beijing 100800, China
電話:+ 86 10 66084064
ファックス:+ 86 10 66084063
ウェブサイト:http://www.seac.gov.cn/lsnsjg/jks/R05index_1.htm

中国教育部:Ministry of Education,

袁貴仁 教育部長( the Minister Yuan Guiren)
教育省政策法律局 孫霄兵 局長 the Director-General of the Policy and Regulations Department , Sun Xiaobing)
住所: No.37 Damucang Hutong, Xidan, Beijing 100816, China
電話 + 86 10-66096440
ファックス+ 86 10-66020743
ウェブサイト:www.moe.edu.cn/edoas/website18/siju_zhengfa.jsp

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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