チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年10月22日
更なる漢語強要に反対する学生たちのデモは広がるばかり。
19日にアムド、ツォロのレプゴン(རེབ་གོང་黄南チベット族自治州同仁県)ロンオで始まった、チベット人に対する、更なる漢語強要に反対する学生たちのデモは周辺地区に広がりつつある。
抗議デモは
最近の教育改革で、チベット語と英語を除くすべての教科を中国語で学ぶことが決定されたことに反発して始まった。
改革では小学校でチベット語は正規の語学授業ではなくなり、中学校以上では選択科目になるという。
RFAによれば、レプコンのデモには6つの学校(同仁第一民族中学、同仁県逸夫民族中学、同仁城市寄宿校、同仁医学院、黄南師範学校、黄南州民族中学)の学生約5~9千人が参加したという。
この時のデモの様子は以下のyoutube
http://www.youtube.com/watch?v=Cy6Cso_KzfM
及びRFA配信映像で見ることができる。(こちらの方がクリアー)
http://www.rfa.org/english/video?param=value&storyId=tibet-qinghai
そのほとんどがティーンエイジの学生たちは「民族間の平等を」「チベット語利用の拡大を」「漢語による教育を強要され、チベット族の言語や文化が衰退する」「チベット語の使用を拡大しよう」「民族の平等を守ろう」などと書かれた横断幕を掲げ、ビデオの中では「母語の権利を!」「民族や文化の平等を!」などと叫んでいる。
レプゴンのデモにはレプゴン・ロンゴ僧院の僧侶たちも参加したが、僧侶が参加すると、武装警察が出動する恐れがあるというので、学生たちは最初僧侶たちの参加を歓迎しなかったという。
http://www.rfa.org/english/news/tibet/language-10192010170120.html
デモは同仁民族中学で午前8時ごろから始まり、14時頃まで続いた。 報告によれば、「20~30台の警察車両が出動し、抗議者を取り囲んだが、拘束されたり、逮捕された人はいなかった」という。
抗議は、中国支配下のチベット地域におけるチベット文化、チベット語、チベット人としてのアイデンティティが浸食されていることに対して起きた。
青海省教育部の最近の会議で、共産党書記と委員長が教科書を中国語に変更すべきと主張したという。
現地からの電話では、「彼らは議論を許さなかった。チベット人教師たちは授業をチベット語から中国語に変更する研修に参加するよう、各県当局から指示された。もしこれが現実になれば、多くのチベット人教師が職を失い、代わりに中国人教師が増えることになる。これはチベット人コミュニティにとって重要な問題だ」。
「数ヶ月前、甘粛省のツォエ(合作)で中国語教科書の使用が強制された際にも抗議の貼り紙が貼られた」。
「その一帯で学校に通うチベット人の数は減り、チベット人教師や職員は理由なく解雇された」という。
これで、漢族の教員が大量流入し、チベット族は失業すると危機感も広がった。
民族学校の元教員は「漢族は文化大革命時代を思い起こさせるような改革を強要している」と語った。
レプゴンで始まったデモは次の20日には同じツォロのツァプツァ(ཆབ་ཆ་共和)とツィコルタンརྩི་གོར་ཐང་にも広がり、ここでも生徒数千人がデモを行った。
http://www.rfa.org/english/news/tibet/protests-10202010175333.html
http://www.rfa.org/tibetan/amdo-students-protests/tsolho-students-protested-against-chinese-government-10202010152231.html
http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=28394&article=Student+protest+against+Chinese+language+in+curricullum+spreads
写真:http://www.freetibet.org/newsmedia/students-protest-language-rights
20日の抗議デモは師範学院と2つの医学校の学生2,000人から始まり、その後、他の学生たちも参加したという。
「けさ8時すぎ、ツォロ民族師範学院と地元の2つの医学校の学生たちが校庭に集まった。彼らは沈黙を守り、この地域で中国語を使う方針に抗議した。その後彼らは縦列に並んで、市へ行進を始めた」。
ツォロ蔵文中学と職業技術学校の約4,000人の学生たちも同様にデモを行った。
この他、ツェコンチベット族中学の2,000人以上の学生たちもチベット語を守ろうと抗議に参加した。
TSGによれば、さらに21日にはゴロク(果洛)・チベット族自治州のタウでチベット族中学の生徒たちが早朝よりデモを行ったという。
武装警官が出動したが、今のところ逮捕者は出ていない。
このデモの写真は同じく以下で見ることができる。
http://www.freetibet.org/newsmedia/students-protest-language-rights
同じく21日レプゴンのゲドゥン・チュペ町で、中学生が構内でデモを行った。
その他、9-10-3(グチュスン、良心の囚人の会)によれば、同様の抗議デモはマンラ(貴南)、ティカ(貴徳)や西宁でも行われたという。
ツイッターなどによれば北京の中央民族大学でも400人による同様のデモが22日に行われたという報告もある。
人権団体などは国連憲章にも「如何なる言語も擁護されるべき」ことが書かれているし、中国憲法においても「少数民族の言語が保証」されている、として今回の中国政府の方針を非難している。
ウーセルさんは「漢人は街で広東語擁護を世界に訴え平穏無事で無罪放免。なら、チベット人も街でチベット語擁護を世界に訴えて平穏無事で無罪放免。でなければ、紛れもなく民族不平等だ!」と主張されている。
追記:ウーセルさんの中国語記事。
デモの写真が沢山掲載されている。
http://woeser.middle-way.net/
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)