チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年10月8日
祝・劉暁波氏ノーベル平和賞受賞/ダライ・ラマ法王の祝辞・声明
劉暁波氏©BBC
ノルウェーの現地時間朝11時に行われたノーベル平和賞の発表を私は、BBCのライブで見ていた。
会場で待ち構える記者団の前で、11時丁度に大きな正面のドアが開かれた。
出て来た委員長の顔を見た時、なぜか私はすでに、確信していた。
そして、彼の口から「2010年度のノーベル平和賞は劉暁波氏と決定された」という言葉が出た時、「おおおお!!!やった!!!」と絶叫。
私は、ノーベル賞委員会の委員長が自ら「中国からの直接的な圧力があった」と発表した時点で、わざわざそんな事実を公表するということはもう劉暁波氏の受賞を半ば決定しているのではないか?と思ったのだった。
そうでなければ、もしも彼が受賞しなかったときには、「委員会は中国の圧力に負けた」と非難されることは目に見えていたからだ。
大方予測していたにせよ、本当に彼の名前が委員長の口から出たときには、自分のことのような喜びがわいて来た。間違いなく、チベット人も大喜びしたにちがいない。人権に関心を寄せる世界中の人々が喜んだであろう。
委員長は授与の理由について、「中国での基本的人権を求めて、長年にわたり非暴力的な活動を進めたこと」と説明し、劉氏を「中国内外における、人権への闘争のシンボル」と讃えた。また「中国は多くの国際協定や政治の自由を認めた自国の憲法にさえ違反している」と言論や集会の自由を認めた中国憲法第53条を引き合いに出した。さらに「人権と平和の間には密接なつながりがある」と説明し、「中国は世界第2位の経済大国になったが、基本的人権の分野において責任を果たす必要がある」とも述べた。
最近益々目立って来た中国の強行姿勢への警戒心を代表して表したとも言えよう。
ところで、中国では彼の受賞は今のところ隠されたままだ。
彼の受賞を伝えるNHKやBBC,CNNのニュースも遮断された。
いつまで中国はこのような子供のようなことを続けるのか。
本人はいつこのニュースを知らされるのであろうか?
獄中の人にノーベル賞が与えられたという前例はない。
中国国内の中国人がノーベル賞を受賞したということも初めてだ。
中国にとってはもちろんのこと、世界にとってもこれは非常に象徴的なできごとだ。
共同通信によれば、妻の劉霞さんは8日の授与発表直後に香港のケーブルテレビ局の電話取材に応じ「信じられない。長年の努力が認められた」と喜びを語り、「中国の民主化運動を支えるすべての人に与えられたものだ」と授与決定に感謝の気持ちを表し「夫が知ったら喜ぶと思う。早く伝えたい」と声を上ずらせたという。
もちろん彼の他に、中国にもチベットにも、数え切れないほどの人々が、体制を批判したとして獄に繋がれている。
彼らが一日も早く解放されることを願ってやまない。
実際、中国がこのまま巨大化していけば、世界が危ない。どうしても変わってもらわないといけないのだ。
FREE TIBET >FREE CHINA>SAVE THE WORLD
ダライ・ラマ法王は劉暁波氏のノーベル平和賞受賞を喜ばれ、さっそく声明を発表された。
以下、その日本語訳。
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PRESS STATEMENT OF HIS HOLINESS THE DALAI LAMA ON LIU XIAOBO BEING AWARDED THE 2010 NOBEL PEACE PRIZE
October 8th 2010
今年のノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏に心よりの祝福を述べたいと思います。
劉氏に平和賞が送られたということは、中国人の間に自国の政治、法律、憲法の改革を押し進めようとする声が増していることを国際社会が認識したことの現れです。
これまで私は個人的に、劉暁波氏を初めとする、中国の民主化と自由を求める「08憲章」に署名した何百人もの中国の知識人や志を同じくする市民たちに感動し、勇気づけられてきました。この憲章が発表された2日後の2008年12月12日、私は訪問中のポーランドからこの憲章を賞賛する声明を発表しました。私は、責任あるガバナンスにむけて現在活動している中国の市民たちの努力の成果を、中国の次世代の人々が、将来必ず享受することができると確信しています。
温家宝首相の最近の「言論の自由はあらゆる国に必須であり、民主主義と自由への人々の要求は逆らいがたいものである」という発言は、中国がもっと開放されることへの要求が高まっていることを示唆していると思います。開かれた国に変わることによってのみ、中国は調和・安定し、かつ繁栄した国となることができるのです。そうなった中国は、世界の平和に大いに貢献することができるでしょう。
この機会に、再び、言論の自由を行使することにより投獄された劉暁波氏と他の良心の囚人を釈放することを私は中国政府に対し要請します。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)