チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2010年10月5日

チベット中央政府首相及び議会議員予備選挙/ネパールで投票箱が略奪

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b0edd140.jpg先の10月3日は、亡命チベット人たちが自分たちの首相と議員を選ぶための民主的選挙に参加できる、非常に嬉しい日であった。
内地のチベット人には決して味わえない貴重な機会だった。

亡命政府が去年実施した国勢調査によれば、亡命チベット人の総数は約15万人。
選挙権を有する18歳以上の亡命チベット人の数は89,000人を少し超えるほど。
その内今回の選挙に登録した人の数は79,449人。

インドを初め世界中の50箇所で投票が行われた。
ダラムサラのツクラカン前の投票場ではダライ・ラマ法王の今回の選挙に関するコメントがスピーカーから流されていたという。
これは一ヶ月前に南インドのバイラコピーキャンプで行われた特別会議の席上法王が話された言葉だった。

ダラムサラ、10月3日 投票日「私は民主主義的プロセスに向かって亡命チベット人社会が前進していることを喜ばしく思っている。しかし、同時に内地のチベット人たちが遭遇している状況に対しては慎重な態度が必要だ」と話され。
また、「私は候補者の中から特別に誰かを推薦するようなことはしない。誰であろうと、もっとも票を集めた首相を支持する」と。

今回の投票は前哨戦であり、50%以上の票を集める候補者がいない場合、本戦が来年3月20日に行われる。

今回の投票結果の発表は約2ヶ月後という。
http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=28239&article=Tibetan+exiles+go+to+preliminary+polls

で、目出たく何事もなく全世界での投票が終わろうとしていた午後4時(半)頃、事件が起こった。

ネパールはカトマンドゥの投票場の内2(3)カ所に突然ネパールの武装警官が押し入り、数千票の投票用紙が入った投票箱を無理やり奪い去って行ったのだ!

この時の現場映像が以下:(プラウザによっては表に表示されないことあり。そのときは下のURLを踏んでください)
http://www.youtube.com/watch?v=Z2_N_iSu3DY

関連記事は
http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=28240&article=Nepal+police+disrupt+Tibetan+elections+in+Kathmandu

http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=28247&article=Tibetans+condemn+Nepal+for+disrupting+exile-prelim+elections

SFTの抗議文(日本語)
http://www.sftjapan.org/nihongo:confiscatedballots

カトマンドゥでの今回の投票に付いては前もってちゃんとカトマンドゥ市当局から許可を取ってあったという。

押し入った警官たちは「これは内務省の命令だ」と言っていたそうだ。
別情報によると、在ネパール中国大使館からネパールの内務省に対し、「亡命チベット人たちの選挙を許してはならない。妨害せよ!」との命令が出たという。

「ショックだった。何もすることができなかった。ボドナートで投票しようとしていた。突然ネパールの警官隊が拳銃とこん棒をもって現れて投票箱を奪って行った。まるで戦場にいるようだった。1人のチベット人が彼らが投票箱を奪うのを阻止しようとしたがその後追いかけられ、壁を飛び越えて逃げた」と現場にいたテンジン・ナムギャル(女性)は話していた。

現場ではすぐにデモも行って投票箱を取り返そうという声も上がったが、「そんなことをしても取り返せない。逮捕されるだけだ」と選挙委員会の職員が説得に勤めた。

これから、どうするか?もう一度投票を行うべきか?それが可能なのか?
現地のチベット人たちは途方にくれているという。

このネパール政府の恥知らずな行動に対し早速ニューヨークのネパール領事館の前で昨日、SFT、TYCによる「民主主義を守れ!恥を知れ!投票箱を返せ!」の抗議デモが行われた。
http://yfrog.com/f5vk4j

今日はロンドンのネパール大使館前でも抗議デモが行われる。
http://www.sftuk.org/protest-nepals-disruption-of-tibetan-election/

中国政府はネパールの内務省に対し、ネパール国内における「反中国活動」を押さえ込むために毎年147万ドルを与えると約束している。

ネパールが中国人民共和国ネパール自治区になる日は案外早く来るかもしれない。
というかもう、そうなってるのかな?

みみっちい金と引き換えに民主主義を捨て、国を捨てるとは!哀れ。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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