チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2010年10月22日

2008年3月14日のラサデモに参加し、最初に亡命を果たしたソナムの証言

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c5fe0674.jpg再掲/2008年5月4日分

先ほど、4日午後6時ごろ、3月14日/ラサ蜂起の、参加者、目撃者である、ケルサン・ソナム氏にネレンカン(ダラムサラ難民一時収容所)で会い、話を聞いてきた。

彼は半年ほど前にカムからラサに一人出稼ぎに来ていた。
パルコルでチベット小物の露天商をしていたという。

3月14日のことを聞く。

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朝8時ごろまずラモチェ寺院の僧侶たちが寺院前からデモを始めた、最初は40~50人の僧侶だけだった。
それを見た周りのチベット人がそのデモに続々参加し始めた。
どんどんその数が増し1000人ほどにも膨らんだ。
彼も「これは一大事。ここで声を上げないと。やるぞ!」との思いで胸が一杯になり、いっしょに叫び始めた。
「ダライラマに長寿を!チベット独立!中国人はチベットから出ていけ!」と叫んだ。

デモが始まって30分ほどして軍隊が来た、
デモをするチベット人たちに向かって来た。
すぐそばで二人、僧侶と60~70代の老婆が長い軍刀で刺されるのを見た。
それからはチベット人たちも軍隊に向かって石を投げ始めた。
チベット人たちもばらばらになったがグループごとになって逃げながらもデモを続けた。
そのころにはラサのチベット人街の至る所でデモや衝突が起こっていた。

10時半頃今度は拳銃を持った武装警官が来て青年2人と尼僧2人が撃たれて倒れるのを見た。
午後4時ごろには軍隊の装甲車が沢山現れた。
もう石を投げてもどうしようもない。
中から機関銃でバババババと撃ってきた。
少なくとも6人は撃たれて倒れるのを見た。
このときいっしょに声を上げていた友人の一人がすぐそばで胸を撃たれて倒れた。
そして間もなくその場で死んだ。簡単に布切れを巻き供養とし、その場を離れた。
倒れた者たちはすぐに兵隊が拾って持ち去って行った。
みんな消えたままだ。

夜の9時ごろ疲れてセラの近くの仮屋に帰った。

次の日から毎日夜中の1時、2時に兵隊が家々を一軒一軒回るようになった。
14日にどこに居た、何をしていたと聞く。
18日までは全く家から外に出ることを禁止されていた。
食糧も買えなかった。
このままここに居ては捕まるだろう。
捕まれば刑期20年だろう。
食い物も、水も与えられず、寝ることさえ許されない。
もうインドに逃げるしかないと決心した。

彼は実は1988年18歳の時にもラサでデモに参加したという。
その時は6か月投獄された。その後もカムでデモに参加し逮捕されたこともあった。それで監獄の酷さは身にしみて知っていたのだ。

運良く彼は3月9日にネパールビザを取得していたのだ。
初めてだがネパールから品物を仕入れようと考えていたからだ。
それを使って7,8回の検問を抜け国境での2時間以上の尋問の末、遂に国境を越えてネパール側に出た。
その時の解放感は忘れがたい。

3月26日、国境を越えネパールのネレンカンに一か月ほどいた。
7日前にダラムサラに到着した。

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本人了解の上、写真と実名を載せる。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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