チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2010年8月12日

8月10日、ラサでショトゥン祭が始まった。

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8edb49a7.jpg8月10日、ラサで恒例のショトゥン(ཞོ་སྟོན)祭が始まった。
ショトゥン祭は1週間行われる。

RFA(チベット語版)http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/tibet-celebrates-the-shoton-festival-08112010225619.html

ショトゥン祭と言えばデブン僧院の巨大タンカ(34mx42m)の御開帳が有名だが、元はその間第1~4日目まではノルブリンカでラモの踊りを歴代ダライ・ラマに披露したりする、ラサの一大娯楽週間だった。
(ダライ・ラマ法王はいらっしゃらないが、形だけは今も踏襲されているらしい)
この時期ラサには大勢のチベット人が集まり、屋外にテントを張りピクニックを楽しんだという。

「ショཞོ」は「ヨーグルト」、「トゥンསྟོན」は「見世物」の意味。この時期ヤクのヨーグルトがちょうどよくできるというので、ピクニックにはみんなヨーグルトを持参したという。だからショトゥンとは「ヨーグルトを飲みながら、踊りなどの見世物を楽しむ」と言うほどの意味だ。

今年のショトゥン祭には政府の観光局は国内からくる中国人、チベット人と外人の観光客合せて100万人!の人出を期待しているという。
そんなに人来て一体どこ泊るの?と思ってしまう。

それで、2008年に行われたショトゥン祭についてのブログを読み返してみた。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51089535.html

その中にはウーセルさんの<ラサは本日“ショトゥン祭”> という詩が載せられていた。
長田さんが自身のブログの中で訳して下さっていたものだ。

以下この彼女の詩を再び掲載させて頂く。

<ラサは本日“ショトゥン祭”>

ラサでは今日“ショトゥン祭”を熱烈に祝ったそうだ。
観光中の友人は、デプン寺に大タンカの開帳を拝みに行った。
午前10時に開帳が始まり、12時に終わったという。

人はたくさんいた? そう尋ねてみた。
チベット人がけっこう大勢いたよ。
タンカを開帳してたのはどんな人たちだった?
とりあえず赤い服を着ていたよ。

もちろん、彼らは、すばらしい役者たちだ。
ラサで“ショトゥン祭”を見事に演じた。

デプン寺、セラ寺、ガンデン寺の僧侶たちは、すでに千人以上が捕まっている。
残された数少ない僧侶たちは“タンカ開帳”に参加しないわけにはいかない。
寺院管理委員会の命令に逆らえる者がいるだろうか?
従わなければ?
従わなければ、武装警察と公安にすぐに取り押さえられ、
ゴルムドの“グァンタナモ”に送られるだろう。

ラモチェ、トムシカン、カルマクンサンといったチベット人が暮らす地域では、
どれほど多くのチベット人が捕まって連れ去られただろう?
チベット人たちは恐怖にふるえながらも“ショトゥン祭”を祝わないわけにはいかない。
居民委員会の命令に逆らえる者がいるだろうか?
祝わなければ?
祝わなければ、年間200元の食糧費の補助金がすぐ取り消されるだろう。

3・14以降、外国のメディアが来訪したときだけは、
退職公務員や現職公務員が寺院に動員され、
参拝する信者を装って、仏像のまわりをぐるぐる回らされた。
行かなければ?
行かなければ、年金は取り消され、職を解かれるだろう。
外国人記者が去るのを待って、寺院は立ち入り禁止となった。
もう一度行ったら?
やはり年金は取り消され、職を解かれるだろう。

はは…
今日、押し合いへしあいデプン寺やセラ寺にタンカを拝みに行った人々も、
ノルブリンカに賑々しく“ラモ”見物に行った人々も、
偽物だよね。
まことしやかな偽物ばかりだと、本物も偽物に見えてしまう。
何もかもが偽物で、心さえ偽物。
ただ涙だけが本物。心の中を流れる涙。

はは…
なんて素早いことか、新華社のニュースがもう流れている。
ラサ人民は“ショトゥン祭をお祝いした”そうだ。
中国西蔵伸息中心の写真も出ている。
去年のタンカ開帳では上演禁止になったチベットオペラが、
今年は不思議なことに上演されている。
あろうことか“伝統儀式”とはまた、あつかましい。
忘れたわけではないだろうな。
では、なぜ去年“伝統”を継承しなかったのかな?

こう言う人がいる。今の中国って…
“小康(そこそこの暮らし)だ小康だっていうのも偽物、
宗教だ宗教だっていうのも偽物、改革だ改革だっていうのも偽物、
開放だ開放だっていうのも偽物、発展だ発展だっていうのも偽物だ”。

私ならこう言おう。今のラサって…
ショトゥン祭だショトゥン祭だっていうのも偽物!
調和だ調和だっていうのも偽物!

2008年8月30日

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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