チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年8月5日
ラサの企業家に無期懲役/ケグドの地震被災地は今/チベット国旗のトヨタ・レーシングカー
今日もいろいろある。
まず、VOT、RFA、ウーセルさん等が伝えるところによれば、
http://www.vot.org/#
7月26日、ラサ中級人民法院は、ラサ・ヤク・ホテルのオーナーでもあり企業家として有名なドルジェ・タシに無期懲役、その兄ドルジェ・ツェテンに6年の懲役刑を言い渡した。
彼らはすでに2年以上拘束されていた。
その間、誰も彼らと面会できたものはいない。
罪状はまだはっきりしていないようだが、ダライ・ラマ法王の法要に寄付をしたのではないか? 何らかの政治的罪状ではないか?と噂されている。
(この情報をVOTに電話で伝えた人は「罪状は分からない」と言ってる)
それにしても驚くべきは没収されるという彼の財産だ。
その額43億元!(約600億円!)という。
こうなると、(地方)政府が財産目当てに、この隠れプロ・チベッタンかもしれない企業家を陥れた、のではないかとの疑いが自然に湧く。
ウーセルさんによれば、彼はアムド、サンチュ(甘粛省夏河)の出身。40才頃ラサに出て独学で英語を学び、最初ガイドの仕事をしていた。
次に飲食、娯楽を中心の会社を作って成功。
2005年「神湖集团公司」を創立。
彼の会社はチベットのホテル業と不動産業を牛耳るほどに成長したという。
ラサのヤク・ホテルと言えば誰でも知ってるラサのチベット式ホテルの老舗。
私も泊ったことがあるが、ここに泊ったことのある人は多いことであろう。
やさしいおばさんが多かったことを思い出す。
もっと詳しいことが分かったらまた伝える。
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被災地から亡命を果たし、今カトマンドゥにいる、1人のチベット人がRFA,VOT等のインタビューに答えている。
彼は、中国は本当に何もしてくれない。チベット人を救ってるのは他のチベット人だけだ」という。
以下、彼の話の70%ほど。
「軍隊の者たちはちゃんとした宿舎を建てそこに住んでいるが、被災者たちはまだみんなテント暮らしを続けさせられている。雨や強い風に悩まされ、大変だ。テントでなくガレキの中にブリキ板を掛けて暮らしている者たちは、屋根が飛ばされそれで怪我をするものも多い。埃もすごい。」
「中国はまったく我々の面倒を見ようとしていない。見に来ることもない。今まで生きてこれたのはみな他のチベット人たちのお陰だ。
自分も土の中で生き残った者の1人だ。」
「被災、1日目に地元の僧侶たちが助けに来た。2日目には近くの僧侶たちが駆けつけたくれた。何百人ものチベット人が彼らによって救われた。3日目にやっと中国の軍隊が来た。それからも自分たちを助けてくれたのは600万のチベットの僧俗だ。彼らの助けがなかったら、もっと沢山の人が死んでいたに違いない」
「テントは2500元で買わないといけない。何でも買わねばならないのだ。払えないときは付けとなる。確かに最初の3か月間月300元ずつ政府から貰った。そんな金はすぐ消える。政府に寄付が沢山集まっていることはみんな知ってる。誰の懐に入っているのか、自分たちには全く届かない」
「再建計画が発表されたが、最初の案では町の中心は庁舎や学校が占領することになっていた。これにはみんなが反対した。そして、第2、第3、今第4案が出されようとしている。この新しい案では大方の者が被災前の居住地に再び住むことができるようになるだろうと期待されている」
との事。
ところで、中国政府は先週終りに「玉樹地震の被災地への義援金はすべて中国政府(の出先機関)を通すこと」という通達を出した。
これで、すべての外国支援団体の金も中国政府に入るか、止まることになる可能性が高い。
亡命政府等を通し、ダラムサラの「ユシュ地震慰安協会」に集められた義援金はどうなるのか?
この前彼らと会った時(2週間前)には「まだ。大使館には言われた書類を提出していない」と言っていた。
今知った中国の発表によれば、
http://news.xinhuanet.com/english2010/china/2010-07/21/c_13408951.htm
中国赤十字は被災地に23億元をつぎ込んで住宅その他インフラ建設につぎ込むという。
全く人々への福祉予算の話はない。
(これとは別に?)3年間に317億元!をつぎ込むとも。
一方、人々はまだテントの中とは!
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トヨタ自動車が主催するレーシングカーのペインティング・コンテストに
「FREE TIBET」デザイン(もろチベット国旗)の車がエントリー。
http://bit.ly/c5C1iG
この車がコンテストに勝ってくれれば、大きなチベット宣伝になる。
投票はネットでオープンされている。
この最高にイケテル車に是非勝って貰おうではないか。
http://www.sponsafier.com/#/gallery/view/356094
にアクセスしてVOTEボタンを押すだけだ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)