チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2010年8月4日

リタンの勇者 ルンギャ(ロンゲ)・アダ

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e591544f.jpgルンギャ・アダ(རུང་རྒྱ་ཨ་གྲགས་)と呼ぼうかロンゲ・アダと呼ぼうか迷っている。
チベット語をラサ方言で発音するとルンギャ・アダ(ック)となる。
しかし、さっきRFAのカム方言(語)放送を聞いていると、彼のことを「ロンゲ・アダ」と呼んでいるように聞こえる。
髪は長いし(単にダシュか?)でロンゲ・アダに戻そうかなと思ったり、迷う。

先ほど、ITSNから彼の「プロフィール・シート」の日本語訳が送られてきた。

以下、張り付ける(ちょっとだけ手を加えた)。

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政治囚プロフィール                 
ロンゲ・アダ Runggye Adak
[中国語: 荣杰阿扎 Rongjie Azha]
年齢:55歳
状況:ダライ・ラマのチベット帰還を公然に訴え、刑務所での服役8年間を言い渡される

チベット東部リタン(理塘)出身の遊牧民ロンゲ・アダは2007年8月1日、リタン僧院の僧院長へカタを捧げようと、中国人民解放軍の建軍80周年を祝う公式行事の際、舞台に上がり出た。彼は力強くマイクを握ると、リタンの競馬祭に集まった何千ものチベット人を前に「ダライ・ラマをご帰還させることができなければ、チベットにおける宗教の自由と幸福は実現されないだろう」と訴えた。彼はさらに、パンチェン・ラマとテンジン・デレク・リンポチェの釈放を求めた。群衆は大きな拍手を送った。ある目撃者は次のように語っている。「全てが物凄い勢いで起きた。ロンゲ・アダは突然舞台に現れ、演説を始めた。多くの人が彼に賛同したが、すぐに警官が現れ、彼を連れ去った。私の周りいた人びとは、これから訪れる彼の運命が如何に恐ろしいかを話していた。」

中国政府は「重大な政治的事件」であると述べ、ロンゲ・アダに「国家転覆挑発罪」を言い渡した。ロンゲ・アダは、「国家の安全を脅かした」とされ、また写真や情報を「海外の組織」(外国のメディア)に提供しようとした以下の2人のチベット人とともに刑務所での8年間の服役を言い渡された。

• Adak Lupoe。 Lupoe [Ch: 阿珠禄波, Azhu Lubo],アダクの甥でありリタン     僧院の先輩僧侶。懲役10年。
• Jamyang Kunkhyen [Ch: 江央贡臣, チベット人の教師で芸術と音楽を教え      る。懲役9年。

4番目のチベット人のLothok[Ch: 罗托 – Luotuo] は3年の服役を命じられ、近々釈放される予定である。

アダの拘束に対し、200人以上のチベットの人々が、リタン警察署前に集まりアダの釈放を求めた。警察署に入り、警察官との対話を要求した者もいた。目撃者は、警察官と軍隊が如何に暴力的に催涙ガスやスタン榴弾、金属の警棒を使って警察署に集まった人びとを追い返したかを語った。現地の政府役人たちはその後、アダの行動を非難するための会議に参加するよう命じられた。国営新華社は2007年8月3日、「ロンゲ・アダは演壇に上がり・・・「チベットの独立」を叫んだ・・・ある警察情報提供者は、「国家の分離を訴え、国家統一に危害を加え、また公の秩序を脅す言動をしたロンゲ・アダの件」に関しては警察が対応する」と報道した。

ロンゲ・アダは判決を言い渡された際、法廷で次のように語った。「私はダライラマ法王の帰還を望んでいた。私は、チベットの問題と我々の不満を訴えたかった。こうする以外方法がなかった。他に方法がないことを悲しく思い、またそのことが行動を起こすきっかけとなった。」チベットのための国際キャンペーンが数週間前、「我々はダライ・ラマのチベットへの帰還を望まない」と記述した請願書を中国政府がリタン僧院で回覧し、僧侶に署名させたと報道した。この国際団体は、この事件が、ロンゲ・アダが今回の行動を起こしたきっかけになったかもしれないと推測している。

目撃者はまた、ロンゲ・アダは演説で、中国政府による土地の分配に関して、しばしばチベット遊牧民の間で勃発する争いにも言及し、土地や水資源に関してチベットの人びとの間で争うことを止めるよう呼びかけたとも語った。チベット遊牧民を土地から追い出し、街に移住させることは中国政府の政策であり、これにより政府は遊牧民の生活や文化を危険にさらし、世界の屋根である遊牧地の生活を脅かす。このような政府の政策は、砂漠化と地球温暖化を深刻化させる。チベットの人々と、彼らのチベットの自然環境に関する何世紀にもわたって蓄積された知識が、気候変動が深刻化している今、チベット高原の生態系の維持のために必要とされている。

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ダラムサラの虹 8月4日今見た、夕日に映える虹。

彼の息子の1人であるジャミヤン・ロプサンは
「私の父、ルンギャ・アダは無実だ。父の話したことは真実であり、チベット内にいるチベット人すべての意思と願望を代弁しているからだ」と語った。
ルンギャは獄中で胃と目を患っているという。
http://bit.ly/dbK12p 

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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