チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年8月3日
ルンギャ(ロンゲ)・アダの貴重な映像/カルマ・サンドゥップの上告却下/スーパーサンガの井本さんが拷問された!?
<貴重な映像:カムの遊牧民ルンギャ・アダのスピーチの一部・日本語版>
この映像は偶然一人の外人が撮影していたものが、最近チベット支援団体に渡されたというものだ。
ロンギャ(ロンゲ)・アダは今からちょうど3年前の2007年8月1日、リタンの競馬祭に集まった数1000人のチベット人を前にこの演説を行った。
(追記:これまで私は彼の名前をロンゲ・アダと表記してきた。これは英語表記のRonggye Adak(Runggye Adak)に従っていたからだ。今日初めてRFAでチベット語を確認できた。それをラサ風に読むとルンギャ・アダ(ック)となる。で、以降これに統一する)
演説は数分間に及んだという。
警官隊が押し寄せたのを見て、ルンギャ・アダは堂々と、群がる警官隊の中に逮捕されるために壇上から降りて行ったという。
これを見ていた群衆はある者は泣き、ある者は賛同を示し、声を上げ、拍手を送ったという。
ルンギャ・アダはその後8年の刑を言い渡された。
家族はこの3年間に一度しか面会を許されていない。
ルンギャ・アダは健康を害していると、伝えられる。
また、この事件を外部に伝えようとしたとして、彼の甥、リタン僧院僧侶アダ・ロプは逮捕され、懲役10年を求刑された。同じく情報を流したとしてチベット美術の先生でもあり音楽家でもあるケンキャップが逮捕され懲役9年を求刑されている。
http://newsblaze.com/story/20100802121031zzzz.nb/topstory.html
2人の刑期はルンギャ・アダのそれより長い。
これは当局が「情報を伝えようとする者」は、「抗議を行う者」以上に罰せられることを示そうとしているのだ、とも受け取れる。
それにしても、たった、数分の演説で懲役8年、それを伝えると懲役10年とは!
言論の自由が皆無という証拠だ。
「彼を解放したい」と思う人は以下を開き、下方にある欄に、ご記名お願いいたします。
http://org2.democracyinaction.org/o/5380/action/FreeAdak
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8月2日付けAP->phayul.comによれば、
http://phayul.com/news/article.aspx?id=27892&article=Chinese+court+rejects+appeal+from+Tibetan+environmentalist
先に15年の刑を受けたカルマ・サンドゥップの上告が、非常に残念ながら、却下されたという。
この決定は7月7日に為されたというのに、その連絡を彼の個人弁護士である浦志強は昨日(8月2日)初めて受け取ったという。
彼はAPに対し、「なぜ当局はこれほど急いで決定したのか? 何を恐れているのか?何を隠そうとしているのか?」と、疑問を呈したという。
彼の解放運動を必ず続けるべきだ。
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もう一つ、今日は一人の勇敢なチベットサポーターとダライ・ラマに等しいぐらい立派なベトナムの高僧を紹介する。
実は昨日、ツイッター上に「スーパーサンガの井本さんがベトナムで共産側により拷問を受けた」という書き込みを発見した。
井本さんとは去年デリーで行われたITSNの会議で一緒になり、その時随分好感を持ち、それ以来親しみを感じている人だ。
気になったので本人に連絡を取ってみた。
ツイッターなどを見て心配していらっしゃる人もいるかもしれないと思い、、、
その返信メールの一部を本人了承の上、以下転載する。
「拷問と言っても、元気にピンピンして帰国しております。
捕まった理由は、共産党政府によって30年軟禁中の、
ティック・クワン・ドゥー老師に、ベトナム僧侶仲間の手助けを借りて
お寺に侵入し、直接御本人に会ったからです。
http://www.youtube.com/watch?v=bIq7q06bpWU(下に添付)
「何の目的でここへ来た?」
「誰の指図でここへ来た?」
「奴と何を話し合った?」等々の質問を浴びせかけられ、
窒息しそうでした。(苦笑)
何を言っても「信じない」と言われるので、
最後はずっと睨みかえしていましたら、
叩いたり、蹴ったりされたわけです。
が、
要は、このような真似を今後二度とするな!という見せつけだったのだと思います。
始末書を書かされ、10万円の罰金を取られて釈放されました。
お騒がせしまして、大変申し訳ありませんでした。」
「ちなみに、ベトナムで捕まったのは私一人だけです。
友人のベトナム人僧侶と分かれて、空港に行き、
バンコクへ向かう便に乗る直前のイミグレで公安に待ち伏せされてました。(苦
笑)
見事な御手際でした。(笑)
井本勝幸 合掌」
とのことです。
いやあ 流石! 井本さんやりますね。
また、このティック・クワン・ドゥー老師がほんとに素晴らしい!
添付の録画は必見です。
ビデオを見て、ダライ・ラマ法王とほぼ同等に素晴らしい人だとつくづく思った。
独裁政権の下で民衆のため、民主、自由、人権のために、こうして命がけで戦い続けている立派な人が沢山いるのだと気付かせてくれた。
共産党のやることはどこも似たようなものということでしょうか?
もっとも、思うにこれと同じようなことを中国でやったら、これぐらいでは到底済まなかっただろうと思いますが、、、
こんな人に会うこと自体、データを持ち出すこと自体不可能に近いでしょう。
とにかく、井本さんが主催する四方僧伽(Catuddisa Sangha)は、チベットだけでなく、広くアジアを中心に権力により不当に虐げられている人々との連帯、援助を目的に幅広く活動されています。
このグループを応援し(続け)ましょう。
ホームページ:
http://www.supersamgha.jp/
ティック・クワン・ドゥー老師へのインタビュー;
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)