チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年8月1日
ダラムサラの野鳥・その15
日本の皆さま、猛暑お見舞い申し上げます。
今年の日本はものすごい暑さのようですな。
この時期、デリーと東京の気温をよく比べるが、今年は東京の方が高い日が多いようだ。
ダラムサラの涼しさを分けてさし上げたい位。
今年のモンスーンは例年より激しく、ダラムサラもほぼ毎日雨、お陰で気温は昼夜20度前後。寒いぐらい。
中国、パキスタン、インドではこの強いモンスーンにより沢山の人々が洪水で亡くなっている。
結局、地球温暖化の影響でこんな猛暑も洪水もひどくなるばかりであろう。
最後はみんなチベットに避難するするしかないかな、、?
さて、立秋も近づいた証拠か? 家の二階のベランダに今年初の彼岸花が咲いた。
この彼岸花、実はもとの球根は法王パレスから頂いたもの。
今頃、パレスの中には沢山の彼岸花が咲いていることであろう。
彼岸花は曼珠沙華とも呼ばれるが、これはサンスクリット語 manjusaka の音写だそうな。もっともmanjusaka の意味は不詳だが、法華経に出てくるそうだ。
彼岸花は美しいが、何だか怪しい雰囲気も持っている。
それもそのはずで有毒植物だ。
ある解説に:
「誤食した場合は吐き気や下痢、ひどい場合には中枢神経の麻痺を起こして死にいたる。水田の畦(あぜ)や墓地に多く見られるが、これは前者の場合ネズミ、モグラ、虫など田を荒らす動物がその鱗茎の毒を嫌って避ける(忌避)ように、後者の場合は虫除け及び土葬後、死体が動物によって掘り荒されるのを防ぐため、人手によって植えられたためである」という。
「美しいものには毒がある」の見本のような花だが、食べようなんて思わず、見て楽しむだけなら何の問題もない。
Kalij Peasant(Lophura leucomelanos) Male70cm & baby
このキジはもう何度か紹介したのだが、可愛い子供を見たのは初めてだ。
このところ朝方 同じ場所を散歩している。
子供は5,6羽か?
いつも群れになって移動している。
群れ(家族)の中にオスを二羽、メスを三羽確認している。
雨が強く降る時など、鳥たちはどこでどうしているのだろうか?と思う。
この時期はもう一般に子育ても終り、巣もないはずだ。
大型の鳥たち、山鳩やカラス、カケスなどは雨に打たれながらも枝の上でじっとしている者もいるが、雨の中、小鳥の姿を見ることはない。
その代わり、雨が上がりそうなときになると、突然どこから現れたのか、沢山の小鳥たちが飛び交う。
日が照りそうな時には盛んに羽づくろいをしている。
鳥たちは本当に丁寧に羽根の手入れをしていることがわかる。
Kalij Peasant(Lophura leucomelanos) Baby
この子がオスなのかメスなのかは分からない。
ここでお知らせ。
私も数日前からとうとうTwitterを始めたのだ。
チベット関係やその他、ただのつぶやきなどを暇な時載せるつもりだ。
だから、これからはツイッター@tonbaniの方もよろしくね!
Kalij Peasant(Lophura leucomelanos) Female 50cm
キジ科の特徴は目の周りの赤い部分だ。これも繁殖期には大きくなりそうでないときは小さくなるとか。
オスのそれは大きな横ハート形だが(今の時期はもう小さくなってる)、メスのそれは最初から小さくて大きな目のようにも見える。
日本のキジのメスの目の周りは赤くないようだ。
Large Yellow-naped Woodpecker (Picus flavinucha)33cm
霧の中、初めて見たキツツキ。
小雨の中でも熱心に木の幹を叩いている。
黄色い冠羽(立て髪)が特徴だが、顔全体のデザインがアフリカ風だ。
Gray-headed Canary Flycatcher(Culicicapa ceylonensis) 9cm
小さな可愛い鳥。
最近、雨が止むと、一人で現れ、空気中に飛んでるらしい小さな羽虫の類を忙しく追いかけている。
Dark-sided Flycacher( Muscicapa sibirica) 10cm
この子もとても小さなヒタキ科の鳥。
色は地味だが顔は飛びきり可愛いと思う。
稀にしか現れない。
この子も何時も一人でいる。
小さい鳥は一般に、忙しなく動き回るものだが、この子はじっとしていることが多い。
名称不詳。
ツグミのメスには違いないが、特定できない。
日本のクロツグミのメスにも似ている。
最近一度だけ見かけた。
Hoopoe (Upura epops) 30cm
すでに紹介済みだが、日本に稀に来るらしい、日本名「ヤツガシラ」
雨でびっしょりになった羽根を、丁寧に羽づくろいしていた。
一見ただ木を撮った写真のように見えるであろうが、この中には少なくとも五羽の鳥が写っている。
二羽のキジバトが飛んでいてMagpie Robin のオス・メスとBulbul(パンク鳥)がいる。
拡大すると確認できる。
最近余ったチャパティやご飯を鳥用にばらまき始めたら、日増しに沢山の鳥たちが集まる様になった。
この鳥たちもそんな鳥たちだ。
Asian Paradise Flycatcher(Terpsiphone Paradisi
これも紹介済みの天国鳥。
一カ月間ほど、ほぼ毎日朝早く見かけていたが、もうどこかに移動してしまったらしく全く見かけなくなった。
一年後まで再び出遭うことはないであろう。
この写真は、岩佐監督が現在撮影している「チベットの少年」のカメラマン津村さんが送ってくださったもの。
津村さんはもちろんムービーカメラが専門だが、スチールで蓮の花を撮るのが趣味という。
最後にもう一つおまけ。
カムはザチュカの草原で遊牧民の一夏を追ったドキュメンタリー。
近代化の波、政府の定住化政策に彼らは脅かされている。
『暗黒時代に入ったのだ』と。
http://www.summerpasturefilm.com/
このトレーラーの最後に若者が泣きながら?語っている部分:
「みんな来生のことなど気にしない。
今生のことしか考えない。
遊牧民は家畜によって支えられているのに、
彼らは家畜を金のために売る。
そして、金は灰と化す。
灰は風に吹かれて消えてしまう」
これを見ていて、私は嘗てチベットで遊牧民のテントに泊った時の事を思いだした。
憧れのチベットテント人生もこれでできなくなってしまうのか?
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)