チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年7月21日
ラサでギャワ・カルマパの写真が禁止となる
昨日のRFAチベット語版によれば、
http://www.rfa.org/tibetan/chediklaytsen/khamlaytsen/kham-stringer/china-restricted-tibetan-in-lhasa-to-display-karamapa-picture-07212010105204.html
中国政府は今月19日、ラサでギャワ・カルマパの写真を保持している者を厳しく取り締まると発表した。
これは特に、カムやアムドからの出稼ぎや巡礼者がよく泊まる宿のオーナーたちに対し通達されたことと言う。
もしも、宿に泊まる誰かがカルマパの写真を持っていることが発覚した場合には、宿のオーナーも連帯責任を負わされるという。
所持していた者は所持品をすべて没収されるそうだ。
これまでも一応カルマパの写真はダライ・ラマ法王の写真と同様、禁止されてはいたのだか、実際には取り締まりの対象とはされていなかった。
RFAは、この通達が出された理由として、カルマパが最近しばしばチベットの政治、人権状況について発言していることと、カルマパの人気が世界的に高まっていること、等が考えられるとコメントしている。
カルマパは中国共産党が歴史上初めて認定した「活仏」だ。
この時から、この世にも不思議な「共産主義政党による宗教転生者認定」が行なわれるようになった。
今では、共産党が認めない「活仏」は「偽物」とまで公言している。
ところで、カルマパは今月末からアメリカへ2週間訪問する予定だった。
しかし、インド政府はカルマパの出国を拒否した。
今年初めにもカルマパはヨーロッパ9カ国を訪問する予定であったが、これもインド政府により拒否された。
カルマパが外国に行くことが許されたのは2008年のアメリカツアーだけだ。
なぜ、今回インド政府が出国ビザを拒否したのかについては、はっきりしない。
もちろん、中国政府が邪魔をしたということもあるだろうが、その他にも、もう一人のカルマパを擁立し、インド政府内の役人と繋がりの深い、シッキムのシャマール・リンポチェの邪魔も考えられる。
http://phayul.com/news/article.aspx?id=27767&article=Why+was+the+Karmapa’s+US+tour+cancelled%3f
何れにせよ。常に法王のそばに座し、人気、実力共に益々影響力が強くなってきたカルマパの活動を抑え込もうとする政治的力が働いていることは確かだ。
2001年初めに衝撃的中国脱出劇を果たしたカルマパだが、自由になれたはずのインドでまた、こうして束縛を受けるという、実に可哀そうな境遇である。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)