チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2010年7月18日

中国共産党は日本軍に感謝すべきか?/中国当局 人権活動家 ブログ遮断

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昨日、テレビのチャンネルを回していたとき、ラサTVの画面上に日本国旗が映ったので、しばらく眺めていた。

日本国旗を掲げながら、10名ほどの日本兵が長い銃剣つきの銃を肩に担ぎ、町を歩いている。
道で遊んでいた中国人の子供たちを「邪魔だ」と次々に蹴飛ばす。
兵士が通り過ぎたあと、子供たちは後ろから日本兵に向かって石を投げた。
中に一人青年がいたが、彼も投げた。
日本兵は怒り、一斉に振り向き、銃を水平に構え、まず一人の子供の胸を撃つ。
二人目が撃たれる。

先に路地に逃げていた青年は、自分の弟(或いは子供)が撃たれたのを見て、すぐに
出て助けようとする、がそれを美人のお姉さんが必死で止める。
今出てはお前も殺されるだけだ、というわけだ。
そうしている間にも、日本兵は子供たちをいたぶり、挙句に笑いながら、一人の子供の胸を銃剣で刺し、殺す。
そして立ち去る。

というシーンが流された。

「またか、まだやってる」と思うと同時に、すぐにチベットの事が連想された。
最近も何度もお知らせしているが、チベット人たちが鉱山開発などに反対し抗議の集会を開くと武装警官隊が出動する。
住民が抵抗の印に石を投げることがある。
そうすると、中国側は銃を水平に構え、住民たちに向かって発砲する。
何人も何十人もこうして撃たれ、死亡したものも沢山いる。

中国は日本軍をネタに、自分たちの美しい抵抗の英雄談ドラマを今も作り続けている。
一方で、今、チベットや新疆ウイグルで自分たちが同じような蛮行を行っているのだから、解らないのは中国だ。

もっと解らないのは、中国共産党が日本軍と直接戦闘したわけではないからだ。
共産党はむしろ華北を中心とした解放区を拠点に日本軍との正面衝突は避けて力を温存し、国民党が日本軍とともに消耗するのを待っていた。
そして、大戦で日本軍が負けたのち、ソビエトの援助を得て、国民党との戦いに勝利しただけだ。

つまり、国民党をやっつけてくれ、敗戦してくれた日本軍に共産党は感謝すべきなのだ。
もちろん、日本の嘗ての侵略戦争を正当化する気は毛頭ないが、それが今の共産党が中国を支配するきっかけ、手助けとなったことは間違いない。

もっとも、そんな当り前の歴史的真実も中国では都合のいいように捻じ曲げられ、ドラマ化され、宣伝される。
だからもちろん、中国人のほとんどは日本軍と戦い、中国を救ってくれたのは今の中国共産党だと信じ込んでいる。

中国人だけじゃない、日本人を含めた多くの外人さえ、ナイーブな人たちはそのプロパガンダにまんまと騙され、そう認識している。

この辺のチベット人も、サンジョル(新参者)たちはそう思っている。
世界で一番残酷なのは日本人だと思っている。(中国の軍や武装警官の暴力は相対化される)
だから、チベットでは子供が悪さをすると、親は「やめないと、日本人(軍)を呼ぶよ!」と脅すそうだ。
日頃、テレビで散々日本軍の中国人惨殺シーンを見ている子供たちは震え上がるそうだ。

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以下、今日の東京新聞朝刊

<中国当局 人権活動家 ブログ遮断>

2010年7月18日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2010071802000062.html

 【北京=朝田憲祐】中国の大手ポータルサイトが運営するブログのうち、人権活動家ら約百人のブログが今月中旬から、閲覧できなくなったことが分かった。関係者によると、サイトの管理者は「(当局の)主管部門からの指示により、やむを得ず遮断措置を取った」と説明したという。中国当局による言論統制の強化とみられる。

 関係者によると、見られなくなったのは▽共産党の独裁廃止を求めた声明「〇八憲章」の主要執筆者の張祖樺氏▽同憲章に署名した法律学者の賀衛方氏▽民主派弁護士の浦志強氏-らのブログ。十四日ごろから、「管理人により削除されました。ご不便をおかけします」などと表示されるようになった。

 大手ポータルサイト「新浪網」にある張氏のブログでは、「中国にはなぜ市民社会が必要なのか」といった項目は表示されるが、本文を閲覧しようとすると「このページは表示できません」となる。

 一方、サイトの管理者は、一連のブログ遮断は「独自の判断ではない」と強調。指示を出した「主管部門」がどこかについては口を閉ざしたという。ある民主派知識人は、本紙の取材に「当局による大規模なネット言論の弾圧が始まった」と批判した。

 中国当局による情報統制は強まっている。今月一日には、主要都市ごとに発行され独自報道に力を入れる「都市報」と呼ばれる新聞に対し、各地の都市報同士の記事の交換を禁じる通達を出した。自社以外の記事を載せる場合は、新華社の配信だけを使うよう指示した。

 今年の全国人民代表大会(全人代=国会)の直前、国内十三紙が現行の戸籍制度を批判した共同社説を一斉掲載するなど、都市報に広がる独自報道の動きを抑え込む狙いがあるとみられる。これに対し、一部の都市報の幹部は、中国当局の幹部に対し、通達の取り消しを求めたという。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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