チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年7月9日
カルマ・サンドゥップ氏の従兄が消える・家族6人目の逮捕者
15年の刑を言い渡されたカルマ・サンドゥップの妻ドルカ・ツォは、消されながらも5度目に立ち上げた自身のブログの中に
「このガン細胞のように増殖する恫喝と脅威の末に私たちの家族は一体どうなってしまうのだろうか?、、、タシ・トプギェルはジロン村で唯一教育を受けた人物だった。私は仏と世界に、彼を探し出すことに手を貸してほしいと祈る」と記している。
ここで名が上げられているタシ・トプギェル(左写真)とはカルマ・サンドゥップの従兄である。
今週、月曜日の夜、彼のラサの家に10人以上の警官が突然押し掛け、彼をどこかへ連れ去ったという。
http://www.thetimes.co.uk/tto/news/world/asia/article2591650.ece#
彼は故郷のチャムド地区で教師をしていたが、行方不明になっていた従兄のリンチェン・ドルジェを探すために最近ラサに来ていた。
リンチェン・ドルジェは僧侶であり、カルマ・サンドゥップの通訳を務めたりもしていた。
彼は今年の3月、瞑想のために洞窟に籠っていたところを逮捕されたという。
タシ・トプギェルは弁護士を雇い、リンチェン・ドルジェの居所を突き止めた。
彼は遠く離れた新疆ウイグル自治区の病院で火傷の治療を受けているという。
警察は「火傷は電気棒によるものだが、それは彼が逃げようとしたからだ」と説明したという。
またもう一人の従兄であるソナム・チュペルは先に逮捕されていたリンチェン・サンドゥップを救うために北京への陳情団を組織したとして、逮捕され、1年半の「労働改造所」行きを言い渡されている。
ICTによれば、カルマ・サンドゥップの70歳代の母親は警官により意識を失うまでの暴行を受けたという。
兄弟の同郷の者たちも、北京に陳情団を送ろうとしたということで、20人ほどが拘束され、審問され、拷問を受けたという。
アムネスティ・インターナショナルも今日付けで声明を発表し、
「中国は、受賞歴もあるチベット人環境保護活動家家族に対する迫害を止めよ」と訴える。
http://www.amnesty.org/en/news-and-updates/china-must-halt-persecution-award-winning-tibetan-environmentalist-family-2010-07-0
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)