チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年7月3日
カルマ・サンドゥップ氏の兄、リンチェン・サンドゥップ氏に5年の刑
先に15年の刑を受けたカルマ・サンドゥップ氏の実兄リンチェン・サンドゥップ氏に今日、5年の懲役、3年の政治的権利剥奪がチャムド中級法院により求刑された。
今回が二度目の審議だったというが、裁判はほんの二時間だけだった。
本人は最後まで無実を訴えたという。
http://www.abs-cbnnews.com/global-filipino/world/07/03/10/tibetan-environmentalist-jailed-5-years
http://www.google.com/hostednews/canadianpress/article/ALeqM5ju7bFLMdPJp7VKMKfh7UpKiNwlCw
リンチェン・サンドゥップ氏はチベット自治区の東端、カムのゴンジョ(གོ་འཇོ་རྫོང་ 贡觉县)を拠点とする環境保護団体を運営していた。
団体は、地元のおよそ1700人のチベット人を動員して、裸になった山々に植林し、ゴミを収集し、密猟を告発し、雑誌を発行していた。
フォード社からも環境賞を送られ、その活動は中国のメディアからも称賛されていた。
それが、どうしてこのようなことになったのか?
彼は弟のジグメ・ナムギャル氏とともに逮捕された。
直接のきっかけは、彼の団体が地元の政府の役人が絶滅危機種に指定される野生動物を密猟していることを知り、それを訴えたからだ。
役人は逆切れして彼を逮捕したというわけだ。
逮捕後に、あらさがしが始まり、結局彼のブログにダライ・ラマのノーベル平和賞受賞式におけるメッセージが掲載されていたとして、最後には「国家分裂扇動罪」という罪状が付けられた。
彼は法廷で、「あの記事と写真は誰か他の人が投稿したものであり、自分が載せたものではない。
自分がすぐに消すのを忘れていただけだ」と証言し、無罪を主張したという。
しかし、そんな言い分はまるで問題とされず、判決は一方的に即決されたという。
「判決は受け入れられない。父は濡れ衣を着せられただけだ」と裁判に出席したリンチェン・サンドゥップの娘ドルジェ・ソンムは語り、さらに「今日の朝、父は以前よりずっと痩せていた。具合が良くなさそうだった。でも、直接話をすることは許されなかった」と話した。
同時に逮捕された、弟のジグメ・ギャルツェン氏はすでに21か月の労働改造キャンプ送りにされているが、家族の話によれば彼は背中を患い、一旦病院に運ばれたという。家族がまともな病院に移そうと試みるも果たせず、もとのキャンプに送り返されたという。
彼はもともと片足が悪く、足を引きずっていたが、今は重度の身体障害者だと家族はいう。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)