チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年6月5日
カム、ミニャック地方の遊牧民・中国国旗、毛沢東などの写真を燃やす
RFAチベット語放送6月4日分によれば、
http://www.rfa.org/tibetan/otherprograms/stringer/tibetan-nomads-protest-against-chinese-government-06042010112501.html
カム、ミニャック地方ナクテン地区のチベット人遊牧民たちが強制移住に反対し、中国国旗や指導者たちの写真に火を付けた。
この地区の遊牧民52家族が嘗てより政府から移住を迫られており、さらに最近10家族が移住の命令を受けたという。
5月12日、地区の住民を中国の役人が招集し、「14日に四川省の偉い役人が視察に来る。だから、準備をしないといけない。家には毛沢東、鄧小平、胡錦涛の写真を掲げよ。家に家具を調え、食糧を豊富に陳列せよ。家具がない者は誰かから借りよ。チーズや、バターや麦、ツァンパも親戚などから借りてこい。そうして、この地区のチベット人が豊かに暮らしているとことを見せるのだ。全ては中国の指導者たちのお陰だと言うのを忘れるな」と訓示した。
しかし、大方の遊牧民たちは今の時期、放牧のため牧草地に出ていたり、冬虫夏草や他の薬草採集のために山に入っている。「役人が来るからと言ってわざわざ里に戻ったり、家具や食料を親戚からわざわざ借りたりするようなことは難しい」と抗議すると、役人は「そういうな、ちゃんと言うことを聞いてくれれば、子どもが試験を受けるときとか、就職するときとかに、特別に面倒見てやるということもあろう、、、」といったそうだ。
その夜、チベット人たちは集会場に掲げてあった中国国旗を降ろし、毛沢東、鄧小平、胡錦涛の写真と共に火を付け燃やしたという。この件についてその後の状況は不明。
5月14日、四川省の役人が現地視察に来たとき、地方の役人は「移住計画は全て順調に進んでいる」と説明していたという。しかし、実際には遊牧民の大半は移住を拒否し、その時、それぞれのテントの竈に火を入れて抗議の煙を上げていたとか。
2009年から始まったこの強制移住計画だが、最近行われたラリ・トンゾと名付けられた52棟の移住村の完成式の最中にも、一人のチベット女性がビデオ撮影中に抗議の声を上げたという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)