チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年5月18日
玉樹地震から1ヶ月、救援の僧侶が警察から取り調べを受ける/ウーセル
先の5月15日、ウーセルさんのレポートを中国語のまま、掲載した。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2010-05.html#20100515それをU女史が翻訳して下さったので、以下掲載する。
玉树地震一个月,救援僧侣被“喝茶”……
http://woeser.middle-way.net/2010/05/blog-post_14.html
<玉樹地震から1ヶ月、救援の僧侶が警察から取り調べを受ける>
4・14玉樹地震からちょうど1ヶ月の今日5月14日は、チベット暦の4月「サカダワ」の1日目でもある。
しかしここでまた、慨嘆すべきニュースが入った。
四川省カンゼ・チベット族自治州にあるラルン・ガル・ゴンパの数千名の僧尼は、4月15日より玉樹の被災地に赴き、民衆の救援に取り組み、被災民に救援金を支給してきた。
以下《ラルン・ガル・ゴンパ青海被災地区救援》記録より:
http://blog.sina.com.cn/s/blog_634541070100huwc.html
“政府の救援隊は準備に手間取り、実際の救援物資の配給は遅れていた。4月19日、(当ゴンパ)救援隊の主な作業は、救援物資と救援金の配給であった。師僧リンポチェが語った、(ゴンパによる)救援隊の具体的な(行動)計画は以下の通り。
朝7時に読経を始め、その後700人余がそれぞれ分かれて、運搬用トラック15台分の救援物資を支給する。一人の被災民も漏らさないよう、(被災地区)全域へ赴き、全てのテント、全ての家族の手元へ物資を届ける。また同時に、150人分の支援金を準備し、ゴンパの師僧を統率者とし僧侶や俗人の弟子で構成される10人一組の15チームに分かれて、心ある人士から提供された310万元の支援金を、困難な状況にある被災民一人一人の手に渡し、彼らの焦眉の急を解決する。”
しかしこの2日間、政府の関連部門はラルン・ガル・ゴンパに関係者を派遣し、玉樹での救援活動に参加した多くの僧侶が取り調べを受けた(事情聴取を受けることを“お茶に誘われる”という)。
情報によれば、取り調べの中心は以下の二点。
1、ラルン・ガル・ゴンパは被災者に対し310万元の救援金を支給したと主張しているが、これは政府から交付されたものではない。よってこれは政府に対する示威行為であると認められる。
2、ラルン・ガル・ゴンパの僧侶は救援の過程を撮影し、救援者と被災者への取材記録を編集した40分の映像《ラルン・ガル・ゴンパの僧侶による玉樹地震救援ドキュメンタリー》を制作し、ネットに流し(一例として
http://www.tudou.com/programs/view/BlEku3KEyXk
この動画は直ちに削除される可能性があるため、至急DLして下さい)、
DVDを制作して広めたが、これは政府への抗議行為と認められる。
映像中、複数の現場の救援者が、地震の犠牲者は万単位であると言及しており、政府発表の死者数とは数倍の差があるため、更に追及の必要がある。
これ以上の情報については、現在のところ詳細不明である。
また、救援活動に関わった他の寺院が同様の取り調べに遭っているかどうかも不明だ。
更にその結果についても判っていない。
(読者諸氏には)関心を払われたい。
2010年5月14日、ウーセル記す
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)