チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年5月18日
ラプラン・中国武装警官の発砲によりチベット人15人負傷
及び、18日付Phayul.com:
http://phayul.com/news/article.aspx?id=27328&article=15+Tibetans+wounded+as+Chinese+police+open+fire+in+Labrang
によれば、
5月15日、アムド、ラプラン地区において、公害と宗教的感情を害するとして地元のセメント工場に対し抗議を行なったチベット人たちに向かい、中国の武装警官隊が発砲、15人が負傷し、病院に運び込まれ、さらに4人が逮捕された。
死者は今のところ出ていない。
事件に先立ち、ラプラン・サンチュ県ホルツァン・マルタン郷の7つの村の住民は連署で、この「アムド・セメント工場」の公害を訴える陳情書を地区の責任者に手渡した。
その中では、工場が宗教的聖域に建てられていることも指摘されている。
さらに、「国の環境保護の法律と政策にも反し、現在の共産党が掲げる“調和発展”“科学的見解”の理念にも反する」と述べられている。
しかし、当局はこの陳情書を無視し、これを知った工場側は逆に地域の住民に暴行を加えたという。
緊張が高まったのは、住民たちが工場の拡張により通行不能となった旧道の代わりに、新しい道を造ろうとしたときだった。
現地と連絡のある亡命チベット人は「マルタンのチベット人たちは、工場を拡張するために通行止めとなったヤルシュル村への道を新しく造ろうと準備していただけだった」という。
工場の職員、マルタン地区の役人、そして警察の幹部はこの新しい道を造るなと住民たちに命令した。
県の責任者は現場で「今から15分以内に退散せよ、さもなくば、、、」と銃を発射するジェスチャーをしたという。
チベット人たちはそれから現場を離れ始めたにも関わらず、発砲してきたという。
現地の目撃者は「彼は15分の猶予を与えると言った。チベット人たちはそれに従い道から離れ始めた。それなのに、武装警官隊は前進し、発砲し始めたのだ」と伝える。
さらに4人のチベット人、スゴ、ゼルロ、ゴンポ・ルンドゥップ、ゴンポ・タルが逮捕された。
現地の他の人の話では、このセメント工場から出る煙や煤塵は、周辺住民の飲料水を濁らせ、周辺の耕作地、牧草地、森林に多大な害を及ぼしているという。
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住民が何か政府や政府系企業に対し苦情を訴えると、すぐにこのように丸腰の住民に対し実弾を発砲する、中国。
実弾をその住民に向け発砲することはその人を、裁判もなく、その場で銃殺刑に処するも同様だ。
それを当局は許可している。
彼らははたして、銃殺刑に値するどんな罪を犯したというのか?
こんな、普通の住民を襲って何になる。
チベット人を人と思っていないのか?
何をそんなに恐れているのか?
これで、だれも責任を追及されることもないという国とは!如何なものか。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)